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なぜ食べる!? 毒料理~珍味を求めて

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毒料理というと今では中国料理が(別の意味で)有名になりすぎているが、毒がある食材は日本でも古くから食べられている。
毒だとわかってもなお食べようとする意味はなにか、今でも食べられている毒あり食材の料理を紹介しよう。

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世界では恐れられているフグの刺し身


フグの卵巣のぬか漬け

 世界に名高い危険食材のフグを調理するさいは、当然毒がない部位を食す。しかしこの「フグの卵巣のぬか漬け」はわざわざ猛毒がある卵巣を使用しているのだ。ちなみにフグの卵巣は全てのフグにおいて有毒なため、食品衛生法で提供禁止とされている。

 法律で禁止されるほど危険なフグの卵巣の調理法が、なんと石川県だけに伝わっているのだ。製造しているのは石川県白山市美川地区と金沢市金石地区そして輪島市だけであり、製造にはなんと3年もかかるという。


 加工前のフグの卵巣は5000~10000MU/g、ほんの一欠片でも死亡する毒性がある。(1MU/g マウスユニット=1グラムで体重20gのネズミが何匹殺せるか、人間の大人(60kg)は10000MU前後が最小致死量にあたる)

 そんな猛毒を何とかして食べようとした石川県民恐るべしなのだが、更に恐ろしいことになぜ無毒化出来るのか、その理由が未だに不明なのだ。塩水に漬け込む時に抜けるとか、発酵時に菌が分解するとかいわれているがハッキリしない。生産者の話では理由が分からないため製造法が変えられない、まさに昔ながらの作り方なのだという。

 そしてフグの卵巣のぬか漬けは完全に毒が抜けているわけではないが、出荷前の検査で10MU/g以下であることは確認しているので人が食べて死ぬことはない。


アワビの肝

 高級食材であるアワビ、その肝は妊婦さんに良いといわれ高級料理でも酢和えなどで食される。その珍味であるアワビの肝には、実はピロフェオホルバイドと呼ばれる毒がある。

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アワビ 

 この毒に犯されると光過敏症になり、光に当たると皮膚が赤く腫れ痒みに襲われ、全治には20日以上もかかるという。人間が発症するにはかなりの量のピロフェオホルバイドが必要とされるので早々当たることはないのだが、東北地方の言い伝えでは

「春先のアワビのツノワタ(内臓)を食べさせるとネコの耳が落ちる」

と猫の事例だが、引き起こされた痒みで掻きすぎて耳がとれてしまう話が残っているそうだ。死なないから大丈夫と考えるのは早計だろう。

 日本の記録として残っているものでは明治時代に2件、戦後間もなくの1947年に岩手県で1件(患者数16人)の中毒記録がある。

 ちなみに貝に毒があるのはアワビに限ったことではなく、赤貝やホタテ、アサリなども貝毒を持つことがあるようだ。理由は毒をもつプランクトンを貝が食べて体内で濃縮され、結果的に毒貝となってしまうのだという。大阪府のHPでは貝毒の発生状況を毎週発表している。潮干狩りをする際は貝毒情報にも注意しよう。