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裏風俗案内人のメモ帳から

file001 週末の歌舞伎町でアフリカ人娼婦を探せ

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私の仕事は顧客の依頼で裏風俗に潜入すること


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写真はイメージです

 私の仕事は、新しい風俗店の経営を考えている裏社会の経営者や、既存の風俗に飽きてしまったVIPの依頼を受け、妖しい風俗に潜入して下調べすること。今回の依頼者は、とある会社の重役だった。そして彼が私に依頼してきたのは、アフリカ人娼婦とセックスがしたいというもの──。

 彼が私にこのような依頼をしてきたのには訳がある。彼がまだ職場の若手として馬車馬のように働かされていたころ、歌舞伎町北側の大久保通りの奥側は、世界各国から集まった娼婦たちが妖艶な姿でひしめき合う、いわば売春ストリートだった。スレンダーな中国系、ゴージャスな韓国系、胸にもお尻にもタップリ肉のついた超グラマラスなコロンビア系、そして東南アジアからやってきたとおぼしきオカマなどが辻という辻に立ち、男たちに声を投げてきた。時代はバブル崩壊前夜の90年代初頭、海外旅行といってもアメリカやヨーロッパが主流のこの時代に、この街の酔客だけは未知の国からやってきた美女の尻を追い掛け回していた。

 そこで彼は見つけてしまったのだ。肌も瞳も髪も色とりどりな女たちの中にあって、ひときわ目立つ女性──ひとりのアフリカ人女性を。

 モデルのようなスラリと長い脚。引き締まった肉体をしているものの、尻や胸はパンと張っていて、例えるならばその雰囲気は一流のアスリートのよう。この界隈にあまたいる女たちとは、あきらかに一線を画すスタイル。だが、その当時、世間で騒がれ始めていたエイズという病気の発祥地がアフリカという風評もあってか、黒人の彼女を買おうとする客はほとんどおらず、毎週末、明け方近くまで彼女は路上に立っていたという。

 日曜日の早朝、始発で帰宅しようとする彼が、彼女と知り合うのは必然の流れだった。そして、彼はアフリカ人女性とのセックスに溺れた。カモシカのような肢体、黒い大理石のような肌、男の精を吸い尽くすまで離れない巨大な尻は、彼女からしか得られなかったからだ。

「その後、女優や歌手と寝たこともあるが、あのときのような快感は二度と味わうことができませんでした」

 そんな思いから、大手企業の重役様が、わざわざ私のような裏街道を歩く人間を見つけ出してコンタクトをとってきたのである。


歌舞伎町の黒人キャッチと交渉


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写真はイメージです

 私はアフリカ人娼婦を探して、深夜の歌舞伎町を歩きまわった。

 現在の歌舞伎町界隈から、依頼者である彼の脳裏に残っているような甘く妖艶な雰囲気はなくなって久しい。街角に立っていた娼婦たちは一掃され、酔客を騙してボッタクることしか頭にないキャバクラのキャッチや裏DVDの売人、そしてお目付け役であるヤクザの地下に潜ったのをいいことに、ガキのようにはしゃいで回るホストばかりが目につく。

 なかでも、ここ10年くらいで一気に増えてきたのが、暗闇の中で白い瞳をギラギラさせているアフリカ人のキャッチたちだ。彼らは、ベロベロに酔った男たちに声をかけて店に連れ込み、来店してくれたお礼に一杯奢ると言いながら、スピリタスやロンリコのような度数の高いお酒を飲ませて昏睡強盗まがいのシノギをしている連中だ。実際、去年の年末には酩酊した客にATMから現金を下ろさせた容疑でナイジェリア人マフィアグループが摘発されている。常識的に考えれば近づきになりたく人間たちだが、黒人娼婦の情報を追っている身としては、彼らを避けて通るわけにはいかない。

 意を決して、暇そうにたむしているアフリカ人キャッチに声をかける。

「黒人とセックスしたいんだけど......」

 妖しい街の妖しい黒人に自ら近づいてくる日本人などほとんどいないようで一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに「カモネギが来た」とでも思ったのか、男は笑顔を浮かべながらフレンドリーに話しかけてきた。
 
「ウチノ店オイデヨ。黒人イッパイイルヨ」

「ちゃんと最後までやれるの?」

「ソレハネー、ダイジョブ。オレニマカセテ」

 ハッキリしない回答だったが、他にあてがあるわけでもなし、この男についていくことにした。

 案内された場所は、繁華街なのに廃業したクラブ跡がいくつもある明らかに怪しい雑居ビルだった。ガタガタ音を立てるエレベーターで3階まであがり、最奥の場所まで案内される。そこは暗めの照明が灯るチープな作りの店内だった。しかし黒人らしき女はいない。

「シンキイチメイサマゴアンナーイ」キャッチの男がおどけた声をあげる。

 私は目を凝らし、暗い店内をもう一度見回す。

「黒人いないじゃん」

「イッパイイルジャン。ホラ、ミンナ黒人。楽シンデッテ」

 キャッチの男はそう言い、私の肩をポンと軽く叩いて、店を出ていった。おそらく、ふたたふ路上へ戻っていくのだろう。

 女たちが一斉に私を見る。どう見ても彼女たちはタイ人かフィリピン人だ。安っぽい色電球が淡く光っているだけの低い店内とはいえ、アジア系とアフリカ系の肌の色の違いくらいわかる。注文を取りに来た店長に、黒人じゃない旨を伝え文句を言うと、「ゴメンオゴルヨ、飲ンデッテ」と、高濃度のアルコールのスピリタスらしきものを差し出してきた。
 
「黒人の女に会わせない限り、一滴も飲まないよ」

 相手は屈強な体躯をしたアフリカ人だ。恐怖心はあったが、こちらも依頼された仕事がある。これまで、どんなオーダーにも答えてきた裏風俗案内人としてのプライドもある。

 ここで引くわけにはいかない。

 こんなボッタクリみたいな店、他に客がいるはずもなく、黒人店長に耳打ちされたフィリピン人ホステスも私のテーブルにワラワラと寄ってきては酒をねだるが、一切無視することにした。