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今井亮一の「裁判傍聴バカ一代」R-ZONE出張版

【裁判所24時】危険ドラッグ「しぇしぇしぇ男」の刑、マスコミが伝えないこと

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危険ドラッグ「しぇしぇしぇ男」の刑、マスコミが伝えないこと

 1月27日、東京高裁で「住居侵入、傷害」の控訴審判決を傍聴した。
 スポーツ報知が同日付けで速報してる。以下はその一部。
 
<「しぇしぇしぇ」田中被告に懲役2年4月 控訴審判決>
 2014年12月に自宅アパートの隣の部屋に侵入し、住人の女性をナイフで切りつけたとして傷害などの罪に問われ、1審の東京地裁で懲役2年6月とされた東京・世田谷区の無職・田中勝彦被告の控訴審判決で、東京高裁(藤井敏明裁判長)は27日、懲役2年4月を言い渡した。
 判決では、危険ドラッグを吸引した状態で犯行に及び、現行犯逮捕後に報道陣のカメラに向けて笑顔で両手ピースサインし、取り調べに「しぇしぇしぇ」と意味不明の発言を繰り返したとされるなど、不審な行動を見せていた田中被告に対し「危険ドラッグを使用しての犯行に同情の余地はない」と1審の判決内容を支持し、厳しく指摘。ただ、控訴審が始まる前に被害者に対し謝罪文を送り、被害弁済金の一部として30万円を支払ったことは「情状にあたる」として、懲役期間を1審から2月短縮した判決を下した。

http://www.hochi.co.jp/topics/20160127-OHT1T50094.html
 
 たった2カ月か減っただけか、あんまり変わんねーな。世間はそう思ったはず。
 だが、じつは、2カ月どころじゃなく減ったんである。
 そこにはどうやら"マスコミタブー"があるらしい。俺のほうでちょっと解説しとこう。
 
 一審・東京地裁の判決(原判決)はこうだった。
 懲役2年6月、未決勾留日数中100日をその刑に算入。2年6月から100日を引くってこと。
 そして今回の東京高裁の判決はこうだった。
 
裁判長 「主文、原判決を破棄する。被告人を懲役2年4月に処する。原審における未決勾留日数中100日をその刑に算入する」
 
 それでだ、以下は刑事訴訟法第495条。
 
第四百九十五条   上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。
○2   上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。
一   検察官が上訴を申し立てたとき。
二   検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき。
○3   前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日又は金額の四千円に折算する。
○4   上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。

(詳細はこちらをリンク)

 分かりやすくいえば、原判決から控訴を申し立てるまでの未決勾留日数は第1項により算入され...。
 さらに破棄判決の場合は、控訴を申し立ててからの未決勾留日数が第2項第3号により算入される。
 
 原判決の言い渡しは昨年9月18日。
 だからつまり、量刑的には2カ月しか減らなかったが、「原判決が破棄された」おかげで、4カ月ちょいが自動的に引かれるんである。
 量刑として減らしたより、未決算入で引かれるぶんのほうが2倍も多いんである。
 
 要するに「しぇしぇしぇ男」の現時点での実際の刑期は、原審の未決算入100日とあわせ──仮釈放なしでも──1年と8カ月弱ってことだ。
 
 この未決算入のこと、マスコミは決して触れない。まるでタブーのように。
 ややこしいばかりで、お茶の間の読者、視聴者にはどうでもいい話だから?

 でもね、服役する本人や家族にとっては、また、ときに被害者にとって、大事なことだろうと俺は思います。


(取材/文=今井亮一)

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TBS newsより




今井亮一 プロフィール
いまいりょういち●交通ジャーナリスト/マンガ原作者/作家。著書は『交通違反ウォーズ!』(小学館)、『なんでこれが交通違反なの!? 警察は教えない126の基礎知識』(草思社)、『裁判中毒 傍聴歴25年の驚愕秘録』(角川書店)など多数。
ブログ「今井亮一の交通違反バカ一代」http://ko-tu-ihan.cocolog-nifty.com/
メールマガジン「裁判傍聴バカ一代」http://www.mag2.com/m/0001035825.html