>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その37 ~毒喰らわば~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その37 ~毒喰らわば~

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 創立100周年目の山口組に起きた「別れ」という離脱分裂劇。マスコミ等では分裂理由を、主に会費の高騰、と紹介しているが、血で血を洗いながら100年間も続いた組織の分裂理由はそんな単純なものではない。
「11年前に戻っただけや」
 分裂理由の真相を知る幹部たちは残念顔でこう言った。山口組は11年前から神戸一派と名古屋一派との間で確執が生じていた。脈々と沸々と続いていたものがこの度遂に分裂というかたちで表面化したのである。六代目山口組の分裂劇とは一体何なのか? 山口組に詳しい藤原良氏に解説してもらった。


「名古屋支配」の網の目


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写真はイメージです wikipedeia「岐阜城」より引用(リンク

 山口組分裂の最大の要因であった「名古屋支配」とはいかなるものなのか。単純に言ってしまえば「支配する者」が「支配される者」を徹底的に管理するシステムということである。シノギという経済活動、組織内の人事から、果ては末端組員の家族が使う雑貨まで「支配する者」の指示を受けることがほぼ義務付けられていたのが「名古屋支配」と言ってもいいだろう。厳密に言えば「支配する者」の中に山健組や宅見組が入っていたこともあるのだが、この連載では総称してそのシステムのことを「名古屋支配」と呼んでいる。

 この「名古屋支配」が、昨年夏の分裂以降、少しずつ変質している。神戸一派を主とする反名古屋派の離脱・脱退により「支配される者」が急激に減少してしまったために、「支配される者」に身を落とす元「支配する者」が続出しているのである。直近の傾向で言えば、六代目山口組直系組織組員の弘道会移籍が進んでいる。下部団体を切り崩されている直系組織もあれば、地域の直系組織がすべて弘道会系に吸収されてしまったところもある。結果として、六代目山口組は名古屋一派の寡占状態になりつつあるのだが、今後さらに「名古屋支配」が続行された場合、いずれは「名古屋勢生え抜き」が「名古屋勢外様」を喰い物にするという共食い状態に陥る可能性まで出てきている。

 共食いをすれば、組織としては弱体の一途をたどるしかないことが明白であるため、いくらなんでもまさかそこまではしないだろう。つまり、現在の六代目山口組には、大きな方向転換が求められているのだが、今の六代目山口組が大転換することはできるだろうか?

 このまま名古屋支配を強硬に推し進めいけば、六代目山口組内に神戸一派以外の新たな反対勢力を発生させ、さらなる離脱・脱退者を生む可能性が非常に高い。そうなれば、最終的には生え抜きの名古屋勢だけしかいない六代目山口組となってしまい、山口組とはもう名ばかりの組織になってしまうおそれもある。

 現在、六代目山口組内では三代目弘道会から直系団体に内部昇格する三次団体が選別、検討されているという。六代目山口組組長が、気心のしれた人間を取り立てて、組織固めを計りたい心境なのは理解できる。大きくなった弘道会を分割して、他の直系団体とバランスを取りたいのもわかる。しかし、すでに六代目山口組組長、若頭、本部長が弘道会出身者で占められているのだ。この上、直系二次団体が弘道会出身が多数を占め、三次団体も弘道会系列ばかりとなったら、六代目山口組は山口組を名乗る必要があるのだろうか? それは山口組と言うより、ただたんに弘道会と名乗ったほうが正確である。もしくは、「弘道会と弘道会と連なるいくつかの団体による連合体」としたほうが適切ではないだろうか。
 
 六代目山口組に残留している直系団体の中には、もしも六代目山口組が崩壊消滅したら自分たちはどうするか?という、「その後のシュミレーション」をはじめた団体もある。はじき出された答えは大別すると、「神戸山口組への移籍」、または「解散」、もしくは「地域の独立組織としてそのまま存続を続ける」の三つのようである。とくに、最後の「地域の独立組織として、いけるところまでいくしかない」という構想を持っている団体が意外に多いらしい。ただし、決して前向きな意見ではない。「もう、なるようにしかならんだろう」という苦肉の策でしかないのだが。

 今も、フロント企業を使って六代目山口組と三代目弘道会が関わる事業プロジェクトが各地で進行中である。ある地域では大規模建設が行われており、またある地域では様々な営業操作が行われている。そのどれもが分裂騒動以前から着手されていたものばかりで、騒動とは無縁に現在も順調に進行中である。ただ、これについても内部からは「銭儲けに熱心で、分裂による組織再編や、ヤクザとしての本分がないがしろにされているのではないか」という声も上がってる。山口組という影響力を行使して事業プロジェクトへ関わっているのだとしたら、なおさら本末転倒的だとも言える。

 ヤクザとは何者なのか?

 あらゆるものが時代の流れとともに変化する。かりに六代目山口組が弘道会出身者で大半を占めるようになったとしても、それが時代の要請とあれば、致しかたないことなのかもしれない。だが、もしも名古屋勢が六代目山口組を独占するのならば、山口組という皿まで喰うよりも自らがドンブリとなって組員たちの受け皿になることも実践していかなければ、六代目山口組の未来はかなり寂しいものになることだろう。当人たちが自覚しているかどうかはともかく、現在の六代目山口組が抱えている諸問題は、山口組だけの問題だけでなくヤクザ暴力団業界全体に関わる問題なのである。


(取材/文 藤原良)