>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その36 ~原理主義か、自縄自縛か。~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その36 ~原理主義か、自縄自縛か。~

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2016年1月、六代目山口組三代目弘道会二代目西心会(本部/熊本県熊本市)の中嶋和男会長ら2人が覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕され、14日には熊本市内にある二代目西心会の本部事務所に熊本県警が家宅捜索しました。逮捕容疑は2014年11月に熊本市内で売人の男に覚せい剤を約10g(末端価格70万円)を10数万円で売り渡した疑いです。


「麻薬撲滅運動」は山口組の悲願だが......


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wikipedia「熊本城」より引用(リンク

 2005年7月の六代目山口組体制発足以来、覚せい剤の事案で破門処分となった組長や組織はいくつもある。

 ご存知の通り、覚せい剤売買は莫大な利益を生む。ヤクザ暴力団不況の時代において、覚せい剤ビジネスは金のなる木の代表格である。組織に内緒にして、覚せい剤ビジネスに手を染める組員も少なからずいる。また、組織単位で極秘に覚せい剤ビジネスを行っている組も少なからずある。六代目山口組では、そういった組を見つけては、「薬物ご法度」を理由に組長を破門にし組を潰したが、それがすべて「覚せい剤はご法度」という言葉通りの内容と目的だったかと言うと、少し異なるケースもあったとも言われている。覚せい剤というシノギに手を染めた組織を処分する際、覚せい剤ビジネスに精通した当事者の組員たちは弘道会系の組に吸収して、密かに覚せい剤ビジネスを引き継いで莫大な利益を上げていたという噂もあったのだ。

「薬物ご法度」というのは建前で、「薬物ご法度」を理由に組長を排除して、その組とその組のドラッグビジネスルートをまるごと奪う、というのである。噂の域を出ない、真偽の確かめようのない話だったが、もしかしたら今回のケースは、その一端が警察の手によって露見したとも言えるのかもしれない。

 いずれにせよこれは、弘道会及び六代目山口組にとっては非常に苦しい状況ではないだろうか。過去の事例を棚に上げ、「今回の件に限ってだけ、逮捕された弘道会系組長も、その上部団体である三代目弘道会々長もおとがめなし」としてしまうのはいささか具合が悪い。どんな組であろうと──かりに、資金面で貢献していた組であろうとも──過去の処分例と照らし合わせてある程度の処分は行わないと、組織としての自浄作用能力を問われることにもなりかねない。

 だが、問題となるのは、処分対象となる三代目弘道会が、言わずと知れた六代目山口組内の筆頭格組織であるという事実である。前例だけを金科玉条のように守って、その結果、弘道会の勢いを削いでしまうことが果たして正解なのか。弘道会の手足を縛って、その動きを抑制するということは、六代目山口組にとっては、まさに、自分の腹を切るのと同じようなものではないだろうか。現在のような状況下で弘道会を処分する、ということは、当事者である弘道会はもちろん、六代目山口組全組員たちにとっても考えなければならない問題であると言えるだろう。

 もっとも今にして思えば、これまで六代目山口組がしてきたことのすべてが、現在の六代目山口組に降りかかってきているだけだ、とも言える。それが運命的な展開なのか、人工的で作為的な展開なのかまでは分からないが、そのどちらにせよ、すべてのはじまりが六代目山口組のスタート時にあったということだけは消しようのない事実である。

 今回、覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕された弘道会系暴力団は、以前は、弘道会の相談役を務めていたほどの名古屋勢の重鎮である。歴史ある団体である。六代目山口組が薬物ご法度なのを知らなかったはずがない。証拠不充分で無罪放免となればいいが、有罪が確定した場合、つまり、法的にも覚せい剤取締法違反が確定し、覚せい剤ビジネスへの関与が証明された時、六代目山口組がどのような決断をするのか? 過去の事例に基づくか、それとも、新しい掟を作り出すのか、どちらにせよ、六代目山口組が非常に苦く、難しい局面をむかえていることに変わりはない。


(取材/文 藤原良)