>  > いったんは釈放された男、幽霊におびえて警察に自首する
元極道の異色作家・沖田臥竜のニュース解説  「プロ」はニュースはこう読む!

いったんは釈放された男、幽霊におびえて警察に自首する

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奈良県警は内縁の妻(当時82歳)を殺害した容疑で大津市大萱の無職、川中浩容疑者(52)を逮捕しました。遺体は平成25年10月に当時住んでいた住居で発見されたのですが、同居していた川中容疑者が「認知症があったので逃げ出した」などと供述したため、保護責任者遺棄容疑で逮捕されました。その後、起訴猶予で釈放され、最近まで土木関係の仕事をしていたのですが、今月21日になって、「実は殺した。女性が枕元に立ち、仕事も手につかなくなった」と警察に自首したといいます。


殺された被害者は殺人犯の枕元に立つか?


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写真はイメージです

 私が、とある事件でお縄にかかり神戸某署に勾留されている時、この川中容疑者のように、「夜中になると、殺めた被害者が枕元に立つ」と言って騒ぎ出す男がいた。その姿は、心底怯えきっていて、逮捕時にはたっぷりとした体躯だったのが、拘置所へと移送される頃には、見るも無残にやつれ果ててしまい、暗い影を引きずりながら、留置場を後にしたのだった。

 本当に、死者が枕元に立っていたのか、わからない。

 毎夜のように、怯え騒ぎたてる男をなだめていた留置場の担当の誰一人、そういった現象をみていない。

 私は現実主義なので、そういった存在をそもそも肯定しないが、ただ否定できるかといえば、それもわからない。

 ただこの男にしても、また川中容疑者にしても、究極の自己嫌悪に襲われていたのは確かではないだろうか。

 誰だってパクられるのは嫌である。それを一度、起訴猶予で釈放され、事件に幕を下ろしたにもかかわらず、自らその幕を上げるように自首してきたというのだから、相当なものがあったのだろう。

 川中容疑者と被害者の亡くなられた女性の歳の差は、30歳以上。いつ出会い、いつ始まったかしらないが、愛だけでははかれない年の差がそこにあったとしてもおかしくないのではないだろうか。

 もしかしたら、寂しさを紛らわすために寄り添うように暮らしていたかもしれない。愛で始まった若い二人でも、一緒に寄り添う内にはさまざまな出来事がおこるものである。そこに30歳の歳の差があれば、尚更ではないだろうか。埋めがたい溝や、越えれない壁が生まれたとしても仕方ない年齢の差が横たわっていたのではないか。

 だとしてもだ。川中容疑者の越えてしまった犯行は許されるものでは決してない。

 川中容疑者の場合、自首が成立しているので、これから始まる裁判でも、それは考慮されるだろう。

 だが問題はそこではない。

 私が留置場で出会った男にしても、川中容疑者にしても、問題は自己嫌悪という呪縛から解き放たれるかどうかではないだろうか。それが叶わぬ限り、川中容疑者が再び社会の地を踏む日が来たとしても、実質的な社会復帰は困難となってしまうのではないだろうか。

 刑期の年数と、自罰感情は、また別の問題なのだから。




沖田臥竜
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。現在、本サイトで小説『死に体』を好評連載中。