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イスラム国に肉薄した男 報道カメラマン横田徹インタビュー

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まずは下記動画を見て欲しい。耳をつんざく銃撃戦、大地を揺るがすミサイルの轟音、そして武装警備兵の目をかいくぐりシリアへの決死の潜入、その先にいたのはあの〝恐怖のテロ組織IS(イスラム国)〟の兵士たちだった。この衝撃映像は報道カメラマンの横田徹さんが上梓した『戦場中毒 撮りに行かずにいられない』(文藝春秋)の告知映像である。今回は死地を縦横無尽に駆け巡り、決定的瞬間をおさめている横田さんに戦場取材の今についてインタビューした。
本文内の()は編集部注

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横田徹(よこた とおる)
1971年茨城県生まれ。97年のカンボジア内戦をきっかけにフリーランスの報道カメラマンとして活動を始める。インドネシア動乱、東ティモール独立紛争、コソボ紛争など世界各地の紛争地を取材。9.11同時多発テロの直前、アフガニスタンでタリバンに従軍取材し、2007年から14年まで、タリバンと戦うアメリカ軍に継続的に従軍取材を行う。13年には、ISの拠点ラッカを取材。10年には中曽根康弘賞・奨励賞を受賞。


戦場カメラマンはツチノコ

──まず新聞やテレビの報道局にいる会社員カメラマンとフリーランスの戦場カメラマンの決定的な違いはなんですか

横田徹さん(以下、横田) そもそも戦場カメラマンなんていません。皆がそう呼んでいるだけで私は報道カメラマンです。私は未だに戦場カメラマンと呼ばれるのは全くしっくりこないし、自分が戦場カメラマンと思ったことは一度もないです。たまたま報道の一貫として戦争を撮ってるだけで、戦場以外も取材しています。一番、長く続いているのが戦場取材というだけです。

戦場取材だけで食べてる人はいないと思いますし、戦場だけを専門にしている人に僕は会ったことありませんから。

──日本以外もそうですか

横田 世界を含めて、今まで会ったことはないですよ。みんなのイメージというか、そうあって欲しいという幻想みたいなものがあると言いますか。

──紛争地帯があってそこを転々としながら写真を撮って生きている。戦場カメラマンというのはそういう幻想が産んだ言葉だと

横田 そうですね、ツチノコみたいなものですよ。ある方が名乗ったのが初めてだと思うんですよね。自分で戦場カメラマンだと名乗ったのは。

それは別に良いんですけどね。スポーツカメラマンで言えばサッカーカメラマンというみたいなもので、別に自分で名乗っていいと思います。

昔は戦場に行くなら(新聞やテレビの)組織に入るのがひとつの手だったのですが、今はまず行けなくなっている。本当に行きたかったら自分でスポンサーを探して、自分でお金を用意して、自分で全部手配する。それで高く売るという。

──それが今の戦場取材を取り巻く状況だと

横田 ええ、特に今年、後藤さんの事件※1があって、それでかなり戦場取材に対する流れが変わってしまったので。

※1......今年の1月ISに拘束されていたジャーナリストの後藤健二氏が殺害された事件。『戦場中毒』ではその際に様々なマスコミに突如対応することになった様子が書かれている

──完全に自己責任でいってくださいと

横田 もう(戦場取材に行くということを)聞きたくないという感じですよね。依頼できないし。

──個人の意思で取材して、もし良い映像や写真があれば買い取るよと

横田 最近イラク北部を取材して、帰国して昨日にテレビ局に売り込みをしましたが、まさにそういう方法ですよね。先に取材費くれとか絶対ありえない状況ですよね。

──著作では97年当時、映像制作会社に入られてキャリアを積むことを考えておられましたが、今は状況が全く違うと

横田 ええ、全く違いますね。ひとつはイラク戦争の時に邦人が3人捕まった事件※2が大きく変えたと思いますね。

※2......2004年4月にイラクで日本人3名が武装勢力に誘拐された事件。当時は自らの意思で行った人間をなぜ国家が救出するべきなのかという『自己責任』論が活発に交わされた

──昨今の自己責任で行ってくださいという対応は日本のマスコミだけなんですか

横田 確かに日本は責任問題とかに敏感なのですが、欧米でもかわりませんね。戦場をやる人は限られます。媒体も雑誌だとまず無理です。まあテレビのほんのひと握りの人が頑張ってやってる状況ですね。