>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その29 ~同床異夢~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その29 ~同床異夢~

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 創立100周年目の山口組に起きた「別れ」という離脱分裂劇。マスコミ等では分裂理由を、主に会費の高騰、と紹介しているが、血で血を洗いながら100年間も続いた組織の分裂理由はそんな単純なものではない。
「11年前に戻っただけや」
 分裂理由の真相を知る幹部たちは残念顔でこう言った。山口組は11年前から神戸一派と名古屋一派との間で確執が生じていた。脈々と沸々と続いていたものがこの度遂に分裂というかたちで表面化したのである。六代目山口組の分裂劇とは一体何なのか? 山口組に詳しい藤原良氏に解説してもらった。


来る者は拒まず、去る者は追わず


 これまで六代目山口組内では、名古屋支配管理体制に対し異なる意見を持つ者や反発する者を徹底的に粛清してきた。やがて状況は離脱分裂騒動へと進展。それを見て、周辺者やマスコミなどでは、組員減少の一途を辿る六代目山口組を総じて形勢不利である評価してきた。人数が多いほうが強いという数の利から言えば、組員減少傾向が顕著な六代目山口組と組員増大の一途でしかない神戸山口組とでは六代目山口組が不利であることは明白だが、六代目山口組から言わせれば「不満分子の一掃」なのだという。

 現在もなお、六代目山口組内には、水面下で神戸山口組側とパイプを持った組員たちが多数いる。彼らは言わばスパイ的な存在で、六代目山口組内のありとあらゆる情報を神戸山口組に提供している。組内にいるスパイ狩りの意味も含めて、六代目山口組にとって、組員の離脱・移籍・流出は「白黒つけるにはちょうどいい現象」でもある。誰が六代目山口組にとっての本物の組員であるか?残った者だけがその者である、という考え方である。

 山口組には昔から「来る者は拒まず、去る者は追わず」という精神がある。これには複雑な意味が込められているが、現在の六代目山口組のスタイルはまさにこの精神に沿っていると言える。

 しかし、スパイという特命を帯びて六代目山口組内に残留し続ける組員はそう簡単には離脱しないだろう。むしろ、最後まで六代目山口組内に残留し続けることだろう。そして、もしも本抗争が勃発した際は、彼らは六代目山口組内で内部破壊専門のゲリラとしての働きを存分にするだろう。事が起こるにせよ、起こらないにせよ、六代目山口組がひとつの組織として健全に稼働できる日は来るのだろうか? 六代目山口組内では同門の者同士が疑心暗鬼し続ける日々が続いている。

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写真はイメージです

 とは言え、現在の六代目山口組は「削れるところまで削れた」というのも事実である。現在の残留者たちは、六代目に対して金銭的縛りがあったり引退許可がおりなかったりする面々というだけでなく、過去の経緯により、六代目山口組を離れるのが不都合な直系組長も多い。

 ある直系組長は、過去、自身がヤクザ暴力団員であるという渡世上の理由で、ある組(現在は神戸山口組に所属)を徹底攻撃した。いくらそれが個人的な恨みなどによる攻撃ではなく渡世上の理由だったにせよ、その組に与えた被害と損害はとても大きかった。昔は、同じ山口組内でもやりあうことが結構あった。兄弟喧嘩、家族喧嘩と言ってしまえばそれまでだが、やり方によっては両者に遺恨を残す。長期服役者や死傷者という抗争犠牲者たちの存在を無視することはできない。過ぎたこととは言え、遺恨は遺恨である。むしろ、六代目山口組と神戸山口組という様にそれぞれ別組織となってしまった今では、遺恨ある両者は一触即発の立ち位置にあるとさえ言える。仮にこの直系組長が神戸山口組に移籍しようとしても、過去の経緯による遺恨の清算がないままでは難しいであろう。

 またとある直系組長は、六代目山口組の菱の金看板で得たシノギを財政基盤の中心としている。自身が山口組を離脱してしまうと、シノギが崩壊する可能性が強くある。『ヤクザは懐が深くなってはいけない』(資産持ちになって、ヤクザらしさが薄れてしまうことを戒める言葉)という言葉もあるが、組織としての運転資金を確保するためには、やはりシノギは必要である。

 こういった点から、現在の六代目山口組は、組員の数が限りなく絶対数に絞られた状態だと言える。残るべくして残った直系組織が大半であることは間違いない。だが、先に記した通り、その人数の中にはまだ神戸山口組側のスパイ組員が潜んでいる。組織としては、まだまだ内部に爆弾をはらんだ状態にあると言えるのだ。

(取材/文 藤原良)