>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その28 ~切り札~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その28 ~切り札~

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 創立100周年目の山口組に起きた「別れ」という離脱分裂劇。マスコミ等では分裂理由を、主に会費の高騰、と紹介しているが、血で血を洗いながら100年間も続いた組織の分裂理由はそんな単純なものではない。
「11年前に戻っただけや」
 分裂理由の真相を知る幹部たちは残念顔でこう言った。山口組は11年前から神戸一派と名古屋一派との間で確執が生じていた。脈々と沸々と続いていたものがこの度遂に分裂というかたちで表面化したのである。六代目山口組の分裂劇とは一体何なのか? 山口組に詳しい藤原良氏に解説してもらった。


六代目山口組東京勢は今


yamaguchi_fujiwara_1208_01.jpg

写真はイメージです

 去る11月下旬。六代目山口組五代目国粋会と落合金町連合を中心として、東京都内に事務所を構える山口組系列団体の面々が親睦のための会合を持った。
 
 東京都内にいる山口組系列団体は、以前から団体の枠を越えて、同じ在京組織のよしみで睦(むつみ)会的親睦の場所をもうける機会が多かった。これにより、無益なバッティングやトラブルを事前に回避したり、今後の取り決め事をするのが習慣となっていた。

 西日本と違い、東日本、とくに関東・東京では縄張り意識が強く、他組織との接触も多いため、東京都内の山口組系列のメンバーが自主的に、事あるごとに親睦会を開催している。あくまでも近所付き合い要素が大きいため、会則や規律などはないが、縄張り意識の強い東京という土地でそれぞれの団体を維持、継続するために、これは有効な方法と言えるだろう。ここでの取り決めをもって、山口組以外の他組織との折衝にあたることも過去、たびたびあった。とかく関西色の強い山口組の各組員が考えた「東京風」のやり方が、これであった。

 今回の親睦会では、分裂後から延々と続く組員の離脱をなくすための引き締めが行われた。日本有数の繁華街として世界的にも有名な渋谷駅一帯の再開発利権や、誰もが知る東京オリンピック利権など、東京には莫大な利権が存在している。六代目山口組にとっても東京利権は必ず手にしなければならない必須の案件であり、かりにその大半を名古屋一派が持っていってしまったとしても、残された利権だけでも他の地方都市のそれとは比べものにならない。東京都内に本部を構える五代目国粋会、落合金町連合、そして、各直系統団体に属する三次・四次団体は、そこを狙っていた。

 だが、現状のように各組員たちの離脱・流出・移籍が相次ぐようでは、たとえ、菱の金看板があっても、人員不足、戦闘力不足を在京の他組織に突かれ、東京での利権を失う可能性もある。先日開かれた東京での親睦会は、組員離脱の食い止め策が話し合われただけではなく、こういった利権獲得と保持についての、言わば"経営戦略"的意味合いが強かった。
 
 周知の通り、六代目山口組の五代目国粋会と落合金町連合はもともとはひとつの組織だった。古くは右翼団体の名門・大日本国粋会からはじまり、1958年に日本国粋会として博徒集団として結成され、東京都及び関東一円に広大な縄張りを保持。その後、組織の名称変更を経て、2005年に山口組入りするまでは、独立した指定暴力団・国粋会として関東地区を中心に存在していた。

 山口組入り後に、国粋会内からの内部昇格で、当時の国粋会・若頭が六代目山口組直系組長にあがると同時に直系組織・落合金町連合が誕生した。したがって落合金町連合の組員の多くが元国粋会の組員たちである。落合金町連合内には、1958年当時の日本国粋会結成の立役者の子孫も組員登録されている。

 現在の山口組内では、五代目国粋会が執行部という最高幹部職にあり、落合金町連合は若中(直系団体)であるが、出自の同じ在京組織という面から、五代目国粋会と落合金町連合は同一派閥に属すると考えることができる。言わば、六代目山口組内における"東京派"といったところだろうか。

 ただし、同一派閥とはいえ、現状は2つの組織であるため、組織としての性格や温度差が多少違う。注目すべきは、六代目山口組内で、執行部入りしている五代目国粋会よりも若中直系団体である落合金町連合のほうが名古屋色が強いというところである。つまり、落合金町連合は名古屋一派の隠し刀的存在なのである。