>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑦ ~ケンカの山口~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑦ ~ケンカの山口~

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 創立100周年目の山口組に起きた「別れ」という離脱分裂劇。マスコミ等では分裂理由を、主に会費の高騰、と紹介しているが、血で血を洗いながら100年間も続いた組織の分裂理由はそんな単純なものではない。
「11年前に戻っただけや」
 分裂理由の真相を知る幹部たちは残念顔でこう言った。山口組は11年前から神戸一派と名古屋一派との間で確執が生じていた。脈々と沸々と続いていたものがこの度遂に分裂というかたちで表面化したのである。六代目山口組の分裂劇とは一体何なのか? 山口組に詳しい藤原良氏に解説してもらった


最後に笑うのは誰か


 離脱分裂となった平成27年。9月には山口組が、六代目山口組と神戸山口組の2つになった。この状況により、広域抗争が警察当局では予測されてはいるが、神戸山口組の樹立を受けて、六代目山口組内の直系組織の中でも新たに離脱を思案している組も多い。一応は、平成27年度中をその思案期間として、年明けにも各組が決意表明しようとしている。そんな状況下で、拳銃による本抗争が開始される事はほぼないだろう。

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『実録大抗争ヤクザ伝山口組vs一和会』竹書房

 抗争ともなれば、我先にと道具を持って走る者もいれば、いつのまにかどこかに雲隠れする者もいる。いつの時代、どの抗争もそうだった。現在の六代目山口組と神戸山口組の関係がどうあれ、これだけマスコミ等で抗争勃発を予測する記事が乱発されているのに、両組の幹部たちの間で、雲隠れする者がいない事が「ケンカの山口」を物語っている(編集部注 雲隠れではないが、1984年の山口組一和会分裂時には小田秀臣小田秀組組長、福井英夫福井組組長、弘田武弘田組組長らの大物組長が一和会への参画を取り止めて引退している)

 六代目山口組と神戸山口組の戦力分析をすると、平成27年の分裂直後で組員数は名古屋一派の六代目山口組が約7000人。神戸一派の神戸山口組が3500人。表面的な数の理から言えば六代目山口組が優勢だ。しかし、実際は、六代目山口組の中心組織である三代目弘道会は警察当局がかねてから行なっていた弘道会壊滅作戦により逮捕服役中者も多く、実働可能な人数は六代目山口組と神戸山口組とではどっこいどっこいといったところである。また、両組とも組員の高年齢化という点が、ともにダッシュ力を失わせていると言える。
 
 実戦力では、猛将である六代目山口組若頭が服役中というのが六代目山口組の痛手と言える。また、剛直な人柄で知られる強者・三代目弘道会々長も以前から続く弘道会壊滅作戦により警察当局から集中的な監視状態が続いている。ようするに、動けない。若頭補佐を務める各組の中には山口組史上伝説の狂人であり恐怖の達人とも呼べる極道者が興した組の関係者たちが在籍する組もある。いざ、ケンカとなった時、彼らが培った実戦能力がどれだけ発揮されるかが戦局の鍵を掴むかも知れない。
 
 神戸山口組の方は、イケイケの山健組をはじめとして、宅見組等、数々の抗争の前線で活躍した組もあるが、注意しなければならない点は、影の協力者、影の組員たちがいるという点である。分裂前の六代目山口組の名古屋支配体制下で破門や絶縁処分となった組員たちが、反名古屋を合言葉に神戸山口組の影の協力者となっている。登録された組員ではないために、その人数を捜査当局が公的に把握する事は難しい。彼らの中には、過去に消滅した超武闘派組織で実戦経験を豊富に積んだ者たちも多い。実際に本抗争となった際、もしも彼らが捨て身の攻撃をはじめたらとてつもない戦闘力を発揮するだろう。
 
 昔から、敵地に不良外国人を送り込み、繁華街の治安を悪化させたり敵組織を混乱させるのがうまい山口組だが、その戦法を最初に採用して実践したのは神戸山口組傘下のとある組の始祖である。不良外国人を使うにはそれなりに雇用金が必要になる。資金面から両組を見てみると、名古屋支配体制の賜物として六代目山口組の方が優勢である。しかし、山口組六代目は公として不良外国人との接触を禁止している為、この戦法を実践するかどうかは謎である。だが、裏をかく名古屋戦法を考察すると、あえて六代目山口組が不良外国人を鉄砲玉に抜擢する可能性もある。

 今のところ言えるのは、六代目山口組と神戸山口組の総合戦力は「ほぼ互角」ではないだろうか。このたびの分裂劇にともなって、マスコミ等で、よく、過去にあった山口組と一和会との抗争話が持ち出されてはいるが、あの時は、大きく分けて武闘派山口組と経済派一和会という構図だったために武力抗争による軍配が武闘派山口組にあがったのは分かりやすい結果だった。しかし、現在の六代目山口組と神戸山口組は、両者とも共に、傘下に武闘派がおり、戦闘力はほぼ互角。資金力では六代目山口組が上回るが、以前から捜査当局が続けている弘道会壊滅作戦が確実に六代目山口組の資源を低下させてもいる。よって、「両者ほぼ互角の状況」と言える。

 もしも本抗争が勃発した時、六代目山口組と神戸山口組が、ほぼ互角であるがゆえに、両者共倒れとなるかも知れない。そうなった時、声高らかに笑うのは一体誰か? 警察か、他団体か、それとも外国勢力か? 展開だけを考えれば、このどれかを取り込んだほうが抗争に勝利するという絵図もあるかも知れないが、ヤクザとしてどう行くべきなのかを六代目山口組も神戸山口組もヤクザ界はもとより「時代」からも問われている。


(取材/文=藤原良)