>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑥ ~会費の行方~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑥ ~会費の行方~

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 創立100周年目の山口組に起きた「別れ」という離脱分裂劇。マスコミ等では分裂理由を、主に会費の高騰、と紹介しているが、血で血を洗いながら100年間も続いた組織の分裂理由はそんな単純なものではない。
「11年前に戻っただけや」
 分裂理由の真相を知る幹部たちは残念顔でこう言った。山口組は11年前から神戸一派と名古屋一派との間で確執が生じていた。脈々と沸々と続いていたものがこの度遂に分裂というかたちで表面化したのである。六代目山口組の分裂劇とは一体何なのか? 山口組に詳しい藤原良氏に解説してもらった

 

業務提携よりも、盃外交による結縁を選んだ関東組織


 六代目山口組内に於ける会費の吊り上げと高騰は、暴対法や暴力団排除条例から組長を守るためだけでなく、名古屋一派による神戸一派への締め付け攻撃の意味もあった事は前記した。とはいえ会費なら、各直系組織とも一律同額(編集部注 115万円プラス積立金10万円だったといわれている)であるために、それでは神戸一派"だけ"の締め付け攻撃にはならないだろうと考える方がいるのも当然である。ここについて解説をする。

 その答えは、神戸一派は稼ぎ場を奪われて吸い取られるだけで、名古屋一派には稼ぎ場の斡旋と支援金があった、である。先記した東京オリンピック利権の名古屋一派独占だけでも充分に理解出来るが、今回は関東圏のとある巨大ターミナル駅の駅前再開発騒動を例にあげる。

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写真はイメージです

 当初、この再開発には神戸一派が関わっていた。当該エリアを縄張りとする関東の組織と山口組とは古くから友好関係状態だったために、神戸一派もこの駅前再開発利権に関わっていたのだ。

 世間では、暴力団排除の声が目立つが、誰しもがご存知の様に、現実として、一般国民や一般企業に損害や迷惑を掛けるのは暴力団よりも「詐欺師」たちのほうである。先の東日本大震災復興の時も、ヤクザや暴力団員は実直に復興支援活動に協力した。スコップを持って働いた者も多い。しかし、詐欺師たちは支援者の顔をして被災地に潜り込み、支援物資や支援金を大量に騙し取った。経済界でも、多額のマネー詐欺で被害者を作り続けているのは詐欺師たちである。

 詐欺師は、法律の網目をかいくぐってヤマを踏む。真面目な人間ほど法律を重んずるがゆえに、法の網目を抜ける詐欺師たちは「裁く法律がない」「違法ではない」というポジションにうまく入り込み被害者に多額の損害を与える。被害者は法令遵守するあまりに、詐欺師に対して泣き寝入るしかないという状況が多い。しかし、ヤクザ・暴力団は違う。彼らには法律を無視する傾向がある。彼らは詐欺師たちを徹底的に追い詰める。詐欺師を裁く法律がなかろうが「騙す奴が悪い」というただその一言だけで、詐欺師の息の根を止める。詐欺師にとってヤクザ・暴力団は天敵なのである。日本のビジネスでは、ヤクザ・暴力団が関わる利権には詐欺師が寄り付かないという事例がいくつもある。

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写真はイメージです

 大規模な駅前再開発利権ともなれば、一般企業だけでなく、詐欺師たちにとっても大きな稼ぎ場である。要するに、そんな巨大利権に詐欺師たちを寄せ付けないためにも、彼らの天敵であるヤクザ・暴力団の存在が必要になる時もある、ということなのだ。そして、その巨大ターミナル駅の駅前再開発にも多数の暴力団員が陰日向にかかわっていた。

 

 さて、その駅前再開発利権に神戸一派が関わっているという情報を察知した名古屋一派は、名古屋一派内の若手ナンバーワン組長を再開発該当エリアを縄張りとする友好組織の幹部と至急、兄弟縁組させた。そして、縁組祝いとして、この駅前再開発利権を神戸一派から名古屋一派へとスライドさせた。山口組六代目の特徴とされる「盃外交」の収穫だったと言える。

 

  再開発該当エリアを縄張りとする組織からすれば、古くから友好関係にある神戸一派からの業務提携の申し入れよりも、名古屋一派との縁組話のほうが重い。名古屋一派側と兄弟分になる事は決して安直な考え方ではない。そして、縁組祝いとして神戸一派と進めていた利権事業が名古屋一派にスライドする事もない話ではない。この様に、名古屋一派は、神戸一派の稼ぎ場を巧みに奪い取った。日本全国の稼ぎ場で同様の事例が多数ある。よって、表向きは、六代目山口組内一律同額会費だったとしても本質は違っていた。神戸一派への締め付けという「兵糧攻め」が続けられていたのだ。

 

 また名古屋一派の某組織が資金的に困窮した際、六代目山口組若頭は数億円もの支援金をこの某組織に渡した。若頭は支援金を渡す際「当たり前だ」と言ったそうだが、神戸一派に支援金が渡された例は当然だが一度もない。