>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑤ ~分裂はまだはじまったばかり~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑤ ~分裂はまだはじまったばかり~

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 創立100周年目の山口組に起きた「別れ」という離脱分裂劇。マスコミ等では分裂理由を、主に会費の高騰、と紹介しているが、血で血を洗いながら100年間も続いた組織の分裂理由はそんな単純なものではない。
「11年前に戻っただけや」
 分裂理由の真相を知る幹部たちは残念顔でこう言った。山口組は11年前から神戸一派と名古屋一派との間で確執が生じていた。脈々と沸々と続いていたものがこの度遂に分裂というかたちで表面化したのである。六代目山口組の分裂劇とは一体何なのか? 山口組に詳しい藤原良氏に解説してもらった

 

日本中の暴力団が「2つの山口組」との付き合い方を再検討しはじめた


 ヤクザ社会における公式発表では、離脱した神戸一派は淡路島を拠点とする「神戸山口組」を樹立し、神戸山口組に参加した主要メンバーたちは六代目山口組から絶縁・破門処分を受けた、ということになっている。

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六代目山口組執行部から関係各位に送付された"絶縁状"。確かに絶縁の理由は書かれていないので、推測するしかない。

 そもそも絶縁や破門にされる原因は、組長の方針に従わない、組の方針に従わない、不義理をした、掟破りをした等と様々あるが、このたびの神戸一派への六代目山口組からの処分理由は、主に〈組長の方針に従わないから〉であるとされている。

 ヤクザ社会には「親分が白い物でも黒いと言えば黒とする」という慣習がある。神戸一派への処分理由の根底にはこの考え方があるとされる。しかし、この言葉は「親分のわがままはなんでもきけ」という意味ではない。任侠道が任侠道であるがために、そして任侠道を死守するがために、親分が「白い物でも黒」と言ったものを子分は「黒とする」のである。ヤクザ組織が、なによりも任侠道を重んずる集団である以上、それが当然の考え方なのである。

 したがって任侠界における親分とは、独裁者でも総理大臣でもスポンサーでもなく、任侠道を誰よりも理解して誰よりも上手に伝える事が出来るという才覚の持ち主でなければならない。子分たちは親分のパーソナルな性格に師事するのではなく、親分が説く任侠道に師事するのである。ヤクザ組織の形態はよく親子という核家庭に例えられるが実質は任侠道に乗っ取った師弟関係を基盤としているところが大きい。

 では、このたびの絶縁・破門処分は任侠道に乗っ取った観点から発せられたものなのだろうか? 

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神戸山口組から関係各位に送付された"挨拶状"の一部。司忍六代目山口組組長のことを「利己主義」と断じている。

 11年間続いた六代目山口組内における神戸一派と名古屋一派の確執────名古屋一派は神戸一派を執拗に切り崩した。会費を吊り上げ、組員に対する時間的拘束と私的支配を強めた。これは去勢を通り越して、破壊工作とも言えるほどの内容だった。つまり、名古屋一派は「静かなる抗争」を神戸一派にやり続け、ずっと神戸一派潰しをし続けた。身内という同組内で破壊工作をし続ける事が任侠道なのだろうか。名古屋一派の破壊工作に異を唱えた神戸一派に対しての絶縁・破門処分は果たして任侠道に乗っ取ったものと言えるのだろうか?

 神戸一派への絶縁・破門処分について、ヤクザ界では現在多くの思案がなされている。掟にならえば「破門者とは付き合ってはならない」である。絶縁者に対しては「追放」である。しかし、その処分理由が任侠道の観点から考察してもっともであるかないか、日本の暴力団社会では今、再吟味、再検討が行われている。

 それは決して内政干渉ではなく、六代目山口組と神戸山口組と自分の組織との距離間をどうするかという論点である。任侠道の観点から捉えて、このたびの六代目山口組から発せられた絶縁・破門処分を真に受けていいのか、否か。

 神戸山口組の誕生がキッカケで六代目山口組から「付き合い停止」とされた広域指定暴力団S組の他にも、六代目山口組との距離間を再検討している周辺組織や関係団体も多い。

 現在の六代目山口組内の数々の直系団体も、平成27年度中は再検討期間として、正月明けに六代目山口組内に残留するかしないかという決意表明を改めてし直すものとする、としている。

 離脱分裂劇は神戸山口組の樹立で完結したのではなく、離脱自体が、分裂自体が、まだはじまったばかりなのである。

 マスコミ等では『近日中にも神戸山口組と六代目山口組との間で抗争勃発』といった見出し記事も多いが、神戸山口組と六代目山口組が、国益のために動く国家でも売上のために活動する会社組織でもなく、任侠道を奉ずるヤクザ組織・任侠集団である事を忘れてはならない。

 組織論から言えば、離脱分裂=敵対=抗争という図式があるのも分かるが、任侠道の観点から、今一度、各人各組織が、神戸一派に対する絶縁・破門処分がもっともであったかどうかを再吟味、再検討している。神戸一派の行動を謀反・逆縁・盃返しと言う人もいるが、ヤクザ組織とは恋人同士でも御家族でも御親戚でも封建制度でもなく、大前提として『共に任侠道に励む者たちの集団である』という事を絶対に忘れてはならない。もしも親分が間違いを起こせば、任侠道により、子分が別離する事も充分に有り得るのである。仁義を重んじる任侠道は、封建社会の武士道とも異なるという点も加えて忘れてはならない。

(取材/文=藤原良)
 
 

サムネイル画像は侠友会本部事務所(兵庫県淡路市志筑)に家宅捜索に入る兵庫県警。JNNニュースより