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連載小説『死に体』第19回

第20話 気持ちだけはみんな一緒に

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第一章(七)

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「静かにしろおおおお!」

 たぶんバタヤンは、騒ぎ立てるクラスメイト達に、いつものように癇癪玉を爆発させ、発症していることだろう。

「何度も言うが、明日の卒業式では、名前を呼ばれたら大きな声で返事をするんだぞ。

 もしも声が小さかったり、元気がなければ、何度でもやり直しさせるぞぉ」

 バタヤンは、こういうことを言いかねないし、こういうことやりかねない。

 そして男子と女子の全員が、
「ええええっっっー!!!」
 と、声を合わせたはずだ。

 オレはこのとき、農作業と称して少年院で芋掘りを強制させられていたので、この場面には存在しない。

 だけど、後日、伝え聞いた話で、いつしかオレの記憶の中では、この空間に存在していたかのように、このシーンを甦らせることできるようになっていた。

「それからもうひとつ。君達の大切な仲間、藤城から今日、君達に手紙が届きました」

「うそぉ! 読んで読んでぇっ!」
と、クラスメイト達が言ってくれたと聞いているが、信じてよかろうな。

「今、藤城は一日でも早く社会復帰できるように、真面目に少年院で頑張っている......と思う......いや、頑張っているはずだっ!」

 バタヤンの歯切れの悪さは、オレの手紙のせいだろう。


────3年6組のゆかいな男子、女子達へ────

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 タバコすいて~。

 こんなコトを書くと、また少年院の教官に腕立て伏せさせられるわ。

 意味わからんやろ?

 スマヌ、愚痴から入ってしまった。

 みんな、元気でやっとるかね。

 オレは元気でもないのに、無駄にスクワット200回だの、拳立て伏せ100回だの、1500メートルを5分切れだの、まるでどこかの独裁国のオリンピック候補生のような虎の穴?の日々を強いられています。

 おかげで無意味にもムキムキになって仕方ないよ。

 だから、みんなも万引きはバレずに、うまくやって欲しい、と願う。


 さて、まだ中学生のぼく達、お嬢様達。

 先日、ここに校長とサトシの兄貴とバタヤンが来てくれ、お兄様は侘びしさ募る卒業式を無事とり行いました。別の意味で、涙なしには語れぬ式となりました。

 ホンマやったら、その後にお礼参りや、景気良く校舎の窓ガラスを割って回りたいところでしたが、それもかなわず味気なさが今も心に残っています。

 できたら、そんな哀れなオレの代わりに、ぜひみんなには派手にガラスを割り倒してもらいたいものです。

 うそです。ごめんなさい。こんなんゆうてたら、ハタチになるまで出してもらわれへんようなるわ(笑)。


 真面目な話な。

 オレはこの1年、あっ1年もなかったか。細かくいうと7ヶ月やな。オレはこの7ヶ月、みんなと机を並べ、同じ時間を共有できてすごく良かったと思っています。

 最後にみんなと同じ場所から飛び立たれへんのは残念やけど、思い出はいつでも記憶の中にあるからなにも淋しくないしな。
 
 オレは、君達と過ごした時間、そして君達1人1人のことを忘れへんから、君達も藤城杏樹という素敵なナイスガイがいたコトを忘れんように──って、なんで上からやねん、てか。

 まぁ、そうゆうな(笑)。

 まぁ、元気でなっ。次はシャバで逢おうぜ!


追伸

 くれぐれも、同窓会はオレに隠れてやらないように!


 なんて手紙だ。バタヤンが怒っているのではない。オレが回想して、びっくりしとるのだ。よくこんな手紙が少年院から世へと出されたものだ。

 よほど、このときの手紙の検閲官が懐の広い人だったか、もしくはいいかげんだったかの、どちらかだろう(多分、後者かな)。

 それにしてもまあひどい。よくこんなんで1年もせぬうちに仮退院できたものだ。若さとは、本当にある意味、怖いもの知らずである。

 同時に素晴らしいものでもあると思う。

 というのも、この手紙を読み聞いたクラスメイト達が感動の渦に包まれたというのだから。

 青春とか、純情とか、大人になるにしたがって青クサイと誰もが鼻で笑うが、本当はいつまでも大切にしなければならない感情ではないのだろうか。死ぬ間際の今になって、そう思うようになってきた。

 このとき、みどはワンワンと泣き出してしまったらしい。

 もちろん後年、本人に確認を取ってみたところ、最後まで認めようとはしなかったが。

 もしも、時が戻るなら、この頃に戻って、もう一度なにに怯えることなく心から笑ってみたかった。


 翌日の卒業式では、空席のはずのオレの名前をバタヤンが読み上げ、クラスメイト全員で返事をしてくれたと母から少年院の面会室できかされたのだった。






沖田臥竜
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。





写真はすべてイメージです