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FtM琥太朗のYARICHINダイアリーズ 第21回 「薔薇の香りのする女編②」

薔薇の香りのする女編②「オレはもうすでに恋に落ちていた」

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女性のヒモ歴ン十年。サオはなくとも、貢ぐ女には事欠かない。
そんな「身体は女性、心は男性」の琥太朗の今回の話は、ズバリ「ヒモになるきっかけとなった女」との出来事。
ヘタな官能小説よりも濃厚でリアルな体験を読んで、リア充も非リアも思い切りhshsしちゃって!


Fall in Love

「とても...良い香りがするね」

 オレは思わず口にした。でも彼女はその言葉を聞いていなかったのか、特に気にする様子もなく、トレーの上に乗っているポテトに手を伸ばしていた。

「そういえば!ごめん!お金渡してなかったよね?!いくらだった?」

 オレは彼女に見とれていてすっかり忘れていた。目の前に並んでいるハンバーガーは彼女が買ってくれたものだ。オレは尻ポケットから財布を出して、お金を出そうとした。財布の中は千円札が3枚。後は小銭がちょろちょろとあるだけだったが、ハンバーガーの料金くらいは払える。そう思って意気揚々と千円札を彼女の前に差し出したが、彼女はそんなオレの様子を見て笑っているだけで、オレの差し出したしわしわの千円札を受け取ろうとはしなかった。

「いいよ!これは私が遅刻したお詫びだから」
「いや...でも...」
「初対面の女に奢ってもらうのは気が引ける? でも年上の女の言うことは素直に聞いておいた方が貴方の得になるわよ。」

 彼女はそう言って、オレの手をそっと押してにこっと笑った。オレはこの時、彼女に恋に落ちた。

「そういえば、まだお互い自己紹介してないわね。私は和美。歳は30よ」
「30歳!? 全然見えないですよ! えっとオレはコタローです。23歳です」
「貴方も歳よりずっと幼く見えるわね。可愛い感じでいいな!」

 和美さんは見た目の印象に反して、手を汚れることを気にせずポテトをパクパク食べていた。清楚な印象が強いので、ファーストフードが似合わないと思っていたが、その姿はとても可愛かった。
 
「私ね、コタローくんみたい人と会うの初めてなんだ。TVでは見たことあるけど、オナベっていうんだっけ? でも、想像してたより可愛くて良かった♥」
「えっと...大丈夫なんですか? オレでも...」
「取りあえず見た目はOKよ。あとは...この後分かるでしょ」

 和美さんはあっけらかんとしていた。オレは逆に変なプレッシャーが掛かって、一気に不安になってしまった。出来れば今日だけじゃなく、この後も会いたいと思っていた。基本伝言ダイヤルで知り合った女性とは一回限りのパターンが多かったし、オレ自身それを望んでいた。面倒なのが嫌だったからだ。エッチが良くても、好きになったりはしなかった。でもオレはこの時初めて一目惚れをしてしまった。オレの頭はショート寸前だった。

「なに? なんか色々考えちゃってるみたいだけど...大丈夫?」
「はいっ!...いやぁ...」

 オレの煮え切らない態度を見て、和美さんは苦笑していた。それでも引いてる感じではなかったのは、オレの希望的観測だったのだろうか。

「今日のプランは私に任せて! 貴方は何の心配もしなくていいわよ。それとも...なんかプラン考えていた?」

 和美さんにそう言われてオレはハッとした。実際言われるまで気づかなかったが、オレは和美さんに限らず、誰と会う時でも特にプランを考えずにその場の流れに身を任せていた。そう、大体が会った女性の方に言われるがままに行動していた。多分和美さんはオレのそんな無計画さを見抜いていたのだろう。そもそも財布の中身が千円札3枚の時点で、アウトなのだろう。オレは思わず恥ずかしさで下を向いてしまった。

 


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(続く)

   

kotaro_profile01.jpg著者近影 最近ちょっと太り気味


琥太朗(こたろう) エイプリルフール生まれ。おギャーッと生れてきたは良いが、母親の腹の中にチンコを忘れてきてしまった先天性FtM(性同一性障害者。女→男)。父親の強烈な女好き遺伝子をきっちりと受け継ぎ、10代後半からその才能を開花させる。現在はホルモン注射のみの治療だが何一つ不自由なくFtMとしてエンジョイライフを送りつつ、トラック運転手として日々荷物と格闘している。

編集部から
FtMとは、Female(女性)to Male(男性)の略称で、ひらたくいうと「身体的には女性に生まれついたけれど、自分は男性である、と思っている人」のことです。水商売で働くオナベさんも広い意味ではFtMに含まれるそうですが、オナベ=FtMというわけではありません。水商売以外で働くFtMもいっぱいいるし、なかには同僚にFtMと気がつかれていない人もいます。他の社会と同様、真面目に働くFtMもいれば、そうでないFtMもいるし、モテるFtMもいれば、非モテFtMもいるのです。この連載では、現在トラック運転手として働く琥太朗が、これまでいかにして女性を食いまくってきたのか赤裸々に告白していきます!