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「オレはいつだって誇りのために闘ってきた」 エンセン井上インタビュー

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人生にはサークルが3つある

──話は変わりますが、2013年の9月から11月にかけて、日本縦断2200kmを歩きながら被災地の現状を発信しようという全国行脚「ウォーク・アクロス・ジャパン」を行ないましたが、あれはどういうきっかけではじめたのですか?

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エンセン ひとつは無理なことに挑戦したかった。もうひとつは東北の応援。歩きで北海道から九州まで東北の応援ネ。看板も作った。

 facebookでみんなと約束したんですよ。エンセンは1360マイル(約2188km)歩くから、みんなはエンセンが1マイル歩くたびに1.3ドル寄付して、エンセンが歩き終わったら、約束した分を東北に届けてほしいって。

 あとは東北の人と同じルールにしたかった。被災者の苦しさを少しでも同じにしたいと思ったから、お金を使って食べ物と飲み物、買っちゃダメなルールだった。泊めてくれる人が見つからなければ、夜も野宿。

 でも......すごかったよ。「ウォーク・アクロス・ジャパン」は、東北はまだ大変だよって伝えたくてやったこと。それが東北の人の感動になるとは思わなかった。オレたちが東北を歩いていると、トラックがクラクション鳴らして「がんばれー」って言ったり、車からひとりの男が降りてきて、ありがとうありがとうって涙流しながら握手されたり、東北の応援でオレたち歩けたね。東北の人の力もらった。

──東北の力になればと思ったら、東北からエンセンさんが力をもらった。

エンセン 本当にそう。だから67日間で完走できた。18kgやせたけどね(笑)。

 あるとき2日間食べてなかった。でも、ファンは握手に来る。写真撮って、握手して、「ありがとう!」って帰っていく。オレたちはもう(へたりこむアクション)(笑)。

 いちばん長かったのは5日間食べてない。ずっと歩いて、飲み物は公園で水とか。食べ物は難しいね。いい日にはファンが3人くらいおにぎりをくれるけど、いっぱいくれたらくれたで腐るじゃない。もうこの人、あさってだったらいいのに......(笑)。でも、もらったものは絶対、ムダにしないルールだったから、食べられる分だけ食べて。食べられない分は誰かにあげて。

──途中でやめようとは思わなかったんですか?

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エンセン スタートの北海道で、フェリー乗り場まで歩くときにもう思った(笑)。だって1日16時間ずつ2日間歩いて、水ぶくれも筋肉痛もすごくて、肩も荷物重くて。でも地図見るとたったこのくらいしか進んでない。冗談じゃない、これはもう無理だと思った。ちょうど台風も4つ来てたしね。

 でも、できるところまでやるつもりだった。倒れるまでやれば、それはそれで感動してもらえるかと思った。

 67日間もよく歩いたよね。人間ってすごいよ。誰かが、「今夜は家に泊まっていって」と言ってくれる。知らない人だよ! その人が家に入れて洗濯してくれる。お風呂入れてもらって、夕飯食べさせてもらって、お布団で寝させてもらって、朝出るときにおにぎりまでくれる。一週間分くらい体力は回復したね。すっごい元気になっちゃう。人間のやさしさに感動した。

 そのときの全員がまだつながってるの。昨日のBBQにも3組の家族が来てくれた。宇都宮の家族、浜松の家族、札幌からBBQのためだけに来た人もいる(笑)。みんなオレたちを世話してくれた家族。みんなで紹介しあって、すごかったね。

 そのとき自分が思ったのは、これは偶然じゃない。人生には、絶対に出会いが必要ということ。今が最高の生き方ね。

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エンセン井上氏提供

 あと、東北に行けば絶対、感動する。絶対に、また行きたくなる。一回で終わりの人はいない。時間あると、すぐに行きたくなるって、みんな言うよ。

 東北に行くと、自分の人生がよくなる。たとえば1万円くらいで水を何ケースか買って渡しに行くでしょう。渡したあとは、あなたが次に水を飲むとき、もう変わってるよ。水を買うに苦労している人がいる。水をあげると喜ぶ人がいる。それを見たら、自分も水が当たり前と思わなくなる。ペットボトル買ったら全部飲むし、水を飲むとちょっと幸せになる。感謝が変わる。

 人生の中にはサークルが3つある。ひとつは「イライラするもの」とか「幸せにならないもの」。たとえば、渋滞とかね。もうひとつは「関係ないもの」、たとえば、今オレが座ってるこの椅子は自分の人生には関係ないね。あともうひとつのサークルは「幸せになるもの」いい時計買うとか、かわいい女の子とデートするとか(笑)、子供にプレゼントあげて、その笑顔見るのもそれ。

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エンセン井上氏提供

 東北に行ったり、行脚したりすると、「関係ないもの」のサークルあったものが、「幸せになるもの」のサークルに移動してくる。オレ、今までの人生で寝るところの心配なんて一回もなかったよ。全国歩く前は、オレにとって寝ることは「関係ないもの」のサークルだった。眠くなったらただ寝るだけ。でも今は寝る前、笑顔。寝るところを探さなくてもいい。雨が降っても移動しなくていい。ものすごい幸せ。氷水を飲むと幸せ。冷たくて幸せ。ラーメン作って食べると幸せ。食べたいときに、食べたいものが食べられて幸せ。人生に幸せがすごい増えた。

東北行ってボランティアすると自分の人生が幸せになる。みんなオレと一緒に東北行きましょう!



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撮影協力
Resturant & Bar LUCE
〒106-0032 東京都港区六本木4丁目12−7 RBビル