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その女が注射器を捨てるまで 第109話

合格への期待と不合格の不安で揺れる中、合否通知が届いた。

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〜第五章まで〜
 シャブ中仲間の裏切りにより覚醒剤使用で再逮捕。精神病院から刑務所での懲役生活を終えてシャバに戻った玲子を待っていたのは、どこに行くにもつきまとう両親からの監視の目だった。しかし旧友やママ友から励まされ、過去の過ちを告白した自分を受け入れてもらえた時、母との確執、そして将来の生活を考えて下した決断は「独り立ち」すること。最愛の子どもを残していくことだけが心残りだったが、人生を再生するため、玲子は再び東京へ向かう決心をしたのだった。


<最終章9 合否発表>

発表の速達が届く

 合否の発表は、試験日から二カ月後。

 ──どうしてそんなに長くかかるの!?

 看護学校の合否発表は、試験日からそんなにかかったりはしなかったのに。

 友達が受けた高校受験や大学受験だって、発表までに二カ月もかかったりはしなかったはず。

 資格試験と進学受験が別モノということを、頭ではわかっていても、苛立ちを抑えられないこともあった。

 ......思いっきり不合格だったら、あきらめもつくのに!

 いえ、それを言うなら、明らかに合格という点を取ってさえいればよかっただけ。不合格なら不合格で、沈んでいたに違いない。


 どっちつかずの宙ぶらりんな、落ち着かない二カ月間を、アルバイトをしながら過ごした。
 緊張と不安が、入れ替わり立ち替わり、浮かんでは消えていった。

 レジ打ちなどのバイト中は、忙しさに取り紛れていても、夜、布団に入って目をつぶると、合格への期待と不合格の不安が、波のように押し寄せた。思いあまって、眠れぬ布団から這い出し、採点をやり直した夜もあった。



 そうして迎えた発表日。

 アパートの部屋で、そわそわと合否通知の郵便を待った。

 そんな早朝に配達されるわけもないのに、六時過ぎには目を覚ました。間を持たせるため、テレビを眺めたりもしたけれど、内容は頭の中にほとんど入ってこなかった。

 気を紛らわせるために、忙しく手を動かしてみた。手の込んだごはんを作って食べたり、普段はあまり使わない柔軟剤や漂白剤まで使って洗濯をしたり、必要もないのに食器棚や本棚を整理してみたり......。
 そうして落ち着かずに時間をやり過ごしながら、何度も何度もポストを見に行った。

 そして午後の一時頃、外のポストのあたりで、オートバイの音に続いてポストをガチャガチャといじる音がした。


 来た。


 合否通知だ。


 サンダルをつっかけてポストまで取りに行き、小走りで部屋に戻るとすぐ、ドアが閉まりきらないうちに、玄関先で立ったまま封を切った。

 三つ折りに畳まれた用紙の上には、あたしの名前と受験番号。

 それを開くと、得点数と短い文章が目に飛び込んできた。

 あたしは、その場にへたり込んだ。


 記されていた点数は、六十八点。
 その下には「残念ですが」ではじまる一文。

 ほかの文字は、もう目に入らなかった。


 不合格だった。


(つづく)



shabu109.jpg

女神は...微笑まなかった。



(取材/文=石原行雄)


石原行雄 プロフィール
闇フーゾクや麻薬密造現場から、北朝鮮やイラクまで、国内外数々のヤバい現場に潜入取材を敢行。著書に『ヤバい現場に取材に行ってきた!』、『アウトローたちの履歴書』、『客には絶対聞かせられない キャバクラ経営者のぶっちゃけ話』など。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishihara-yukio/