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工藤明男コラム

断片的な情報から透けて見えてくる元少年Aの「乾ききった心」

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「弁護士」はこの件にどこまでからんでいるのか?

 ひとつだけ気になる点があります。

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「<神戸連続殺傷>手記出版に女児の母が文書でコメント」毎日新聞

(中略)弁護士を通じて男性(筆者注・元少年Aのこと)の手紙が届き、山下さんは22日に弁護士事務所で読んだという。手記を無断で出版したことについて、謝罪の気持ちがワープロ書きで記されていたという。山下さんは「(手紙は)B5用紙で10行ほど。まるで本の送付書のようだった。これまでの手紙とは内容も性質も大きく異なり、受け取る気持ちになどとてもならなかった。手記も受け取っていない」と明かした。「<神戸連続殺傷>手記出版に女児の母が文書でコメント」毎日新聞(リンク

 弁護士を通じて元少年Aから手紙が届いたとのことですが、出版社サイドが用意した弁護士なのか、それともこれまで元少年Aがご遺族の方々に謝罪の手紙を送るのを介した弁護士なのかが気になりますね。同じ弁護士だとしたら、これまで毎年謝罪の手紙を送り続けながら無断で『絶歌』の出版をした元少年Aの片棒を担いだ形になると思います。

 片棒といえば、連日、取材を申し込むメディアは出版した太田出版とどう違うのだろう?

 手書きからワープロ書きに変わったところから、元少年Aの乾いた心情がうかがえます。『絶歌』、半分は読み進めましたが、確かに読み進めるのがしんどい著書です。

 以下は犠牲者の山下彩花さん(当時10歳)の母京子さん(59)が毎日新聞に寄せたコメントの全文です。元少年Aの文章とは比べ物にならないくらい悲しく、真摯な文章だと思います。

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彩花へ―「生きる力」をありがとう 著/山下京子 刊行/河出書房新社

 昨夜、元少年Aからの手紙を弁護士の事務所で読みました。B5用紙にほんの10行ほどが印字されており、まるで本の送付書のようでした。これまで来ていた手紙とは内容も性質も大きく異なるため、受け取る気持ちになどとてもなれませんでした。もちろん手記も受け取っていませんし手紙も持ち帰っていません。

 6月10日、手記が書店に並ぶその日に新聞社から出版の事実を知らされたこと、実名ではなく「元少年A」と匿名で出版していること、遺族や関係者のみが知るべき事実が公にされたこと、Aの手記出版を手助けした人たちが居ることなどを知った当初はショックを受け、傷つき、憤りを感じました。

 しかし時間の経過とともに冷静になり、「元少年Aや出版社の人たちと同じ土俵に立ちたくない」という結論に達しました。連日、メディアから取材の要請がありましたが、最初にコメントしたあと言葉を発することを控えていたのは、家族で話し合ったうえで先の結論が出ていたからです。

 先日、兵庫県明石市の泉房穂市長が、遺族感情を踏まえ市内2カ所の市立図書館にAの手記を置かない方針を表明されました。また、各地の書店でも販売自粛や不買の動きが広がっているようです。こうした日本社会の良識に心から感謝するとともに、今回の一連の騒動が、一日も早く最も良い形で収束する事を願ってやみません。そして、彼らに振り回されることなく、私たちが歩むべき道を歩いて行くことを彩花は望んでいると信じています。

平成27年6月23日 山下京子





サムネイル画像は「<神戸連続殺傷>手記出版に女児の母が文書でコメント」毎日新聞より





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