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その女が注射器を捨てるまで 第59話

シャブ中の言うことを信じて許す自分がバカだった

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「あたしシャブ中でした」
元覚醒剤常習犯、阿佐見玲子。
厳格な家庭に育ち、息の詰まる毎日だった少女時代。
そして男と出会いようやく幸せの糸口を掴んだかにみえたとき、魔物が心の隙に忍び込んだ。
ひとときの痛みから逃れるために手を出してしまった覚せい剤。
そこから運命の歯車は狂っていくのだった。
この物語は、そんな彼女の転落と再生の軌跡をたどった実話である。


<第三章⑯ 裏切り>


ガンギマリの久間木

 久間木の目は、かつて一緒に注射していたときのミツオの目と同じように血走っていた。

「あんた、射ったんでしょ!」

 問いただすと、久間木はあっさり自白した。

「もうダメなんだよ、射ってするセックスを覚えちまって、射たずにやっても良くないんだよ」

 もじもじと体をくねらせながら、畳に額を付けそうな勢いで久間木は頭を下げた。

「ごめんよ! でも、おまえと一緒に射つ気はこれっぽっちもないから! それだけは信じてくれ! おまえには迷惑かけないから!!」

「迷惑かけないって言ったって、あんたがパクられたら、あたしだってまた疑われるんだよ? シャブやるなら東京でやってよ! あたしの前ではやらないでよ、もう絶対に!」

「そうする」と言う久間木の言葉を聞いて、あたしは布団に入った。

 その程度の確認で済ませてしまったことが悔やまれて仕方ない。

 翌朝から久間木はなにごともなかったかのように振る舞い、夜はそれまでどおりあたしの布団に潜り込んできた。次の日の晩とその次の晩は、久間木を否んだけれど、さらにその次の晩は受け入れた。

「おまえには迷惑かけないから、それだけは信じてくれ!」

 必死で謝る久間木を信じたいと思った。

 窮地に立たされたあたしに救いの手を差しのべてくれた人だから、信じたかった。

 結局、寝る前に久間木を受け入れることで、暗黙のうちに久間木の覚醒剤使用も容認するようなかたちになってしまった。

 決定的な事件は、それからさらに一週間後、釈放からちょうど四週間後の夜に起きた。

 あたしはまた、久間木が覚醒剤を使うのを見つけてしまった。

 電灯を消して一旦布団に入ったあと、久間木は布団から這い出して、暗闇の中でごそごそとなにかをはじめた。そういうことは、これまでにも何度かあったけれど、その晩はとくに長かった。

 心のどこかで用心し続けていたのかも知れない。
 微かな違和感に、息をひそめて様子をうかがっていると、ごそごそと動く音の中に小さく、カサッと乾いた音が聞こえた。

 まただ!

「ちょっと!」

 思わず大きな声を上げながら立ち上がり、電灯を点ける。と、向こうを向いてあぐらをかいた久間木の背中が目に飛び込んできた。

 久間木は全裸だった。

「なにしてるの!」

 正面に回り込みながら、視線を落とすと、足元にパケが落ちているのが見えた。

 完全に正面に回り込むと、久間木が自分の局部を握っているのが見えた。



chushaki+.jpg

一体何をしようとしているの...


(つづく)


(取材/文=石原行雄)


石原行雄 プロフィール
闇フーゾクや麻薬密造現場から、北朝鮮やイラクまで、国内外数々のヤバい現場に潜入取材を敢行。著書に『ヤバい現場に取材に行ってきた!』、『アウトローたちの履歴書』、『客には絶対聞かせられない キャバクラ経営者のぶっちゃけ話』など。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishihara-yukio/