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俺の、最後の獄中絵日記 第117回

その現実を受け入れろ!

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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その現実を受け入れろ!


2013年(平成25年)4月28日

岡山に居る親父から手紙が届く。

例の通り、封を開くまで俺の不安は大変なもので、キツい。

中には便箋1枚。

<おふくろが入院する。1、2週間ぐらいのものだから心配いらない>

バカヤロウ、心配するだろう。

何で入院するんだ。

入院するほど具合が悪いわけだろ?

もっと詳しく書けっていうんだ。

俺はここにいて何一つしてやることができない。

病院に手紙を出すわけにもいかない。

東京に1人住むおふくろの介護の手はどうなってる?

俺はただ手をこまねいて心配する事しかできない。

この心配がこのあとの毎日のテンションを劇的に下げるのだ。

頭にくるから便箋を手に取り手紙を書き出す俺。

<たいした事がないなら、おふくろが退院してから手紙をよこせ!>

<精神的に参るから手紙はいらない!>

もう不満をぶつけた、まさに殴り書きの文面だ。

しかし......待てよ。

なんだよ、この言い草は。

自分の言いたい事だけ書いてるだけじゃないか。

先日のKちゃんとSには広い心で対処ができたのに......。

親父もおふくろも、もう歳をとったんだ。

信じたくはないが、とても弱い人になってしまったんだ。

それなのにまだ俺はこんな自分勝手なことを言うバカヤロウなのか。

現実を受け入れろ。

もう両親に甘えるのではなく、優しく見守ってあげなきゃならない立場になってしまったことを受け入れなければならない。

手始めに、おふくろが1人退院してきてポストを見た時喜ぶようなあったかい手紙を出しておこう。

だから、この手紙は書き直しだ。

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