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俺の、最後の獄中絵日記 第115回

言葉が見つからない

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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言葉が見つからない


2013年(平成25年)4月28日

手紙が届いたよ。

先日、Sに送った手紙の返事だ。

Sの奥さん、Kちゃんにガンが見つかったときき、できる限りの励ましの言葉を書いて送ったところ
<励ましてくれてありがとう。直接、Kにも手紙を書いて下さい>
とのこと。

さらに申告用にと、封筒の中にはKちゃんの免許のコピーまで同封されていた。

ただその手紙には、俺の予想外のことまで記されていたんだ。

   

見つかったガンは、乳ガンのステージ4。

末期だとのこと。

身近な人間がガンの末期を宣告されるなんてテレビ画面の向こう側の話とばかり思っていたのに、自分に訪れてしまうなんて。

前に送った手紙で俺は
<腰の骨折でガンが早期発見されるなんて幸運だったね>
と書いてしまった。

しかし、実際は、ガンの転移による骨折だったのだ。

Sの手紙によれば、余命の告知はせず、治療もホルモン治療にとどめていると書いてあったが、それがどういう処置なのかは俺には判らない。

そして手紙の最後には、
<あいつは自分の事より、周りの人間の事を気遣っているスゲー女だ>
とあった。

Kちゃんの健気さに胸がつぶれる思いだ。

と同時に、Kちゃんには<あまり無理しなくてもいいんだぞ>と声をかけたい自分もいる。

手紙にはなんて書こう。

俺は本当に弱い人間なんだ。

だから、こんなところに居るんだよ。

そんな男が、どんなに気の利いた言葉をかけてやれるってんだ。

自信ないよ......。

でも、手紙書くよ。

   

今の俺にできる事って、それだけだものなァ。

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