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俺の、最後の獄中絵日記 第104回

月形グリーンマイル

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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月形グリーンマイル


2013年(平成25年)4月17日

作業中にシャッターが開いて、向かい側にある倉庫に材料を収納するっていうので手伝いのために呼ばれた。

シャッターからは歩いて10歩ほどの所なのだが、俺はここへ来て初めて空の下に立つ。

およそ4ヶ月半の間、建物の外から一歩も出なかったなんて、そんな事信じられるかい?

いつの間にかそれが当たり前になってしまっていたけれど。やっぱりストレスは知らないうちにたまっていたのかもしれない。

向かいの倉庫に荷物を降ろして工場に戻るまでの、距離にしてわずか10歩ほどの道のりを歩きながら、周りを見渡す。

やっぱりここは北海道でも田舎なんだナ。

塀の外には建物ひとつ見えずに、どこまでも低い坊主頭の山並みが見えるだけだ。

視界の多くを空が占めるなんて都会じゃありえん。

4ヶ月半のストレスも手伝って、心洗われるのを体で感じた俺は、そっとマスクを外して大きく息を吸っていた。

これが自由の臭いか

俺は、今のこの気持ちを、いつまでも忘れずにいようと思った。

いつかシャバに帰った時、シャバの空気を当たり前に感じようだったら──

俺よ、お前に進歩はない。


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