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FtM琥太朗のYARICHINダイアリーズ 第2回 新宿で逆ナンしてきたオンナ②

新宿で逆ナンしてきたオンナ編②「目の前5センチのところに柔らかい唇が」

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前回までのあらすじ
 1992年春、新宿東口で謎の美女に逆ナンされたFtMの琥太朗は、女に誘われるまま大久保のホテル街へと足を向ける。だが、ホテルの玄関で「こんなうまい話があるわけがない!」と急に正気に戻った琥太朗は、お姉さんに弱々しく抵抗するのだった。

編集部から
FtMとは、Female(女性)to Male(男性)の略称で、ひらたくいうと「身体的には女性に生まれついたけれど、自分は男性である、と思っている人」のことです。水商売で働くオナベさんも広い意味ではFtMに含まれるそうですが、オナベ=FtMというわけではありません。水商売以外で働くFtMもいっぱいいるし、なかには同僚にFtMと気がつかれていない人もいます。他の社会と同様、真面目に働くFtMもいれば、そうでないFtMもいるし、モテるFtMもいれば、非モテFtMもいるのです。この連載では、現在トラック運転手として働く琥太朗が、これまでいかにして女性を食いまくってきたのか赤裸々に告白していきます!


口紅のついたタバコをオレの口に

「マ、マジですか!? ヤリたいだけなら、ほか当たったほうがいいって!」

 煌々と輝くパネルの前に立ち、いそいそと部屋を選んでいるお姉さんにオレは動揺した声をかけたが、当然のようにお姉さんは無視。

「この部屋にしよっと♡」

 お姉さんは部屋を決めて、鍵を受け取った。そしてオレがまだフロントでグズグズしているのを見ると、再び腕を絡ませて、エレベーターまで強引に引っ張っていくのであった。

(今からこの部屋でセックスするのか......)

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 ホテルの部屋はこじんまりしていて、ほとんどベッドで占領されていた。部屋の隅に小さなテーブルと椅子が置いてあったので、オレは椅子に腰かけてタバコを吸い始めた。

「びっくりした? 急にごめんねぇ」 

 お姉さんは悪びれた様子もなくそう言うと、オレのタバコを取り上げ、自分の口に運んだ。そして一服すると、またオレの口にタバコを戻した。タバコのフィルターにはお姉さんの口紅がベットリ付いていた。

 それにしても、ずいぶん男のあしらい方が上手い。

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(これが大人の女ってヤツかぁ......)なんて呑気に考えてる場合じゃない! まずは状況説明をしてもらわないと。

「ちゃんと説明して下さい。なぜオレをこんなトコに連れてきたんですか? てか、オレたち初対面ですよね?」

 オレの剣幕に驚いたのか、お姉さんは「やれやれ......」といった感じに小さく首を振って、事の経緯をポツポツと話し始めた。

 お姉さんは、歌舞伎町の夜の店でホステスとして働いているのだという(道理でイイ女のはずだ!)。

 だが、最近、キモい痛客からストーカーされているとのこと(当時はストーカーなんて言葉はなかったけど)。今日も仕事がオフで、買い物しに新宿まで出てきたんだけど、いつものごとくストーカーキモ男にあとをつけられているのに気がついてウンザリしていたところ、偶然、オレを見つけたのだという。

「なんでオレ?」

「見た目がタイプだったから」

「てかオレ、男じゃないよ」

 そういうと大体の人は驚くはずなんだが、お姉さんはとくに驚いた様子もなかった。というか、むしろパッと花が開いたような笑顔になった。
 
 くやしいけど、お姉さんの笑顔はキレイだった。

「やっぱりオナベくんだったんだねぇ! 私、オナベくんに興味があったんだぁ。以前お客さんと一緒にオナベのお店に行った事あるけど、そこで働いてた子より君のほうが全然男の子だねぇ!」(その当時はまだ性同一性障害という言葉は無かった。)

 そう言うとお姉さんはオレの首に腕を回してきた。お姉さんのぽってりとした唇が、あと5センチのところまで迫ってきた。思わずつばを飲み込むオレ。感心するほどの男あしらいの上手さだ。この至近距離の破壊力は抜群すぎる。オレも年齢のわりには経験が豊富なほうだと思っていたが、やはりプロの女性と比べたら、天と地ほどの差があるようだった。強烈な香水の香りがオレの欲望を刺激する。オレの(空想上の)チンポが痛いほど勃起した。

 このまま襲い掛かってしまいたい衝動が暴風雨のように身体中を荒々しく駆け巡っていたが、無理やり力づくで抑え込んだ。いくら美人でフェロモンたっぷりでタイプとはいえ、いくらイイ匂いがしてオッパイが大きくて柔らかくて谷間が丸見えとはいえ、こんな訳分からん状態で勢いに任せて下手に手を出したら、あとで何があるか分からない。まぁこんなガキ相手に美人局もないとは思うが、危ない橋は渡らないに越したことはない──と、最後の紙一重のところで、理性が勝ったのかもしれない。

 いや、違うな。きっとすべてがお姉さんの主導権で進んでいくことにムカついたんだ。まだその頃はオレも青臭いガキだったからね......。

「お姉さん、そんなにオレとヤリたいの? オレは高いよ? それでもいいなら相手してあげてもいいけど......」

 かなりの上から目線だと思ったが、それでもお姉さんは動じなかった。

「本当に生意気ねぇ。でもそこがいい感じよね。私も結構高い女だからおあいこね♡」


   



kotaro_profile02.jpg著者近影(手前) ちなみにお母さんはご覧のとおり美人


琥太朗(こたろう) エイプリルフール生まれ。おギャーッと生れてきたは良いが、母親の腹の中にチンコを忘れてきてしまった先天性FtM(性同一性障害者。女→男)。父親の強烈な女好き遺伝子をきっちりと受け継ぎ、10代後半からその才能を開花させる。現在はホルモン注射のみの治療だが何一つ不自由なくFtMとしてエンジョイライフを送りつつ、トラック運転手として日々荷物と格闘している。