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エイズ患者が国内で急増中の「背景」

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若い男性の感染者が増加中

 エイズや梅毒などの性感染症が日本国内で急増中だ。

 国立感染症研究所の調査によると、2014年の国内のエイズウイルス感染者(HIVキャリア)とエイズ患者の数は1520人と、2013年の1590人(過去最高)よりも若干減少はしたが、依然として高止まりの傾向にある。また、梅毒も2013年に1226人と現行の統計法が採られた2000年以降で初めて1000人を超えて1226人に上り、2014年には1671人と記録を更新しており、今年に入ってもハイペースで増え続けている。

 だが、さらに気になるのは、若者のエイズ感染の増加だ。

 2015年4月、東京都は2014年の都内のエイズ患者とHIV感染者の合計が512人(13年より43人増)、特に20代のHIV感染者が148人で過去最多だったと発表した。発症した患者は97人で前年より13人減少しているが、感染者は415人で56人増加しているという。

 患者・感染者の97%は男性が占め、感染経路(自己申告による推定)は同性間の性的接触が373人(73%)が大半であり、異性間の性的接触が91人(18%)、母子感染や注射針の使い回しなどは48人だった。

 また、年齢別では感染者は20代(148人)が全体の36%を占め、30代の135人(33%)と合わせると7割近くを占め、未成年も3人いる。

 数字ばかりで混乱するが、これは何を意味するのか?

「公的機関は、差別の助長になるとの配慮もあって『若い同性愛者の男性の間でHIVキャリアが増加している』という表現を使いたがらないのですが、事実としては残念ながらそういうことになります」
性感染症に詳しい川崎みな子医師(仮名)は、こう指摘する。

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中学生用 保険体育の教科書(学研ホームページより)

 男性同士の性交では妊娠の心配がないため、比較的コンドームを使わないケースが多く、また肛門は非常に薄い粘膜なので、傷つきやすく出血もしやすいため、傷口からウイルスが侵入しやすい、というやむを得ない事情もある(ただし同性愛者の男性はHIVに対する危機意識が高く、自発的に定期検査を受ける人間も少なくないので、エイズを発症してしまったエイズ患者の増加が目立つには異性愛者のほうである、というデータもある)。

 いずれにせよ教育の現場で「もっと実地的な性教育」が必要であることは言うまでもないはずだが、実際に学校で性教育を推進しようとすると、必ず「寝た子を起こすな」という反対意見が出てくるのだという。

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中学生用 保険体育の教科書(学研ホームページより)

「性の知識を教えると興味をもち、性的に不適切な行動をするようになるから、大人になるまで教えるべきではない」という意見である。

 一見、もっともらしい意見のようにも思えるが、そのような消極的姿勢が現在の状況を引き起こした大きな原因のひとつだと言っても過言ではない。

 そろそろ性教育の曲がり角に来ていることは間違いない。