>  > 風ひかる
後藤武二郎「俺の、最後の獄中絵日記」第87回

風ひかる

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、北海道の月形刑務所で服役中。関東で生まれ育った武二郎にとって、真冬の北海道は目新しいものばかりだった!


風ひかる


enikki_087.jpg

2013年(平成25年)3月27日

北の国に来てから3ヶ月。

極寒の季節を過ごしてきて、信じられないほど真っ白な雪の光景を目にしているのに、なぜかつららを目にすることはなかった。

つららがどうしてできるのか、無い頭で良く考えてみたよ。

あれは解け出した雪のしずくが途中で凍りついて、また少し解け出したしずくがつららの先で凍って......って事だろ。

つまり、いままではあまりにも寒くて、雪が解け出すどころではなかった、という事だよ。

ところが昨日、朝、目覚めると、向かいの第8棟の屋上に光るものが現れた。

朝日がつららに反射して、まぶしく光っているのだ。

ついに雪が解け出した。

北の国、月形にも、やっと春がそこまで来たようだ。

季節の移り変わりを見て、こんなに感動したのは生まれてはじめてかもしれない。

でもサ、よくよく考えれば、同じ景色を来年も同じこの場所で見なけりゃいけないわけだよ。

果たしてその時、俺は喜んでいるのだろうか?

......うんざりしてるんだろうナ。