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俺の、最後の獄中絵日記 第85回

シャバの常識、ムショの非常識

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、北海道の月形刑務所で服役中。関東で生まれ育った武二郎にとって、真冬の北海道は目新しいものばかりだった!

シャバの常識、ムショの非常識

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2013年(平成25年)3月25日

遂に取り調べが──と、言っても俺じゃないよ。

同じ班の仲間が、整列の時ボソッと言ったんだ。「雑居に戻りたい」って。

先日、運良く独居に空きが出て、異例のスピードで雑居から転房できたのにどうしてだよと思って部屋に帰って仲間に聞くと、なるほど情報のスピードは素晴らしい。

この件を知らないのは俺だけだったんだから。

何でも舎房でお茶をこぼしてしまい、びしょ濡れになった靴下を脱いで絞っていたところを、これまたタイミングよくオヤジに現認され"不正洗濯"とみなされ、取り調べを受ける事になってしまったらしい。

これで新入扱いとなり、雑居へ戻って末席からやり直しという、少々辛い事になったわけだ。

うちの工場に最初に来た時も、オヤジから担当台を指さされ、「そこで待ってろ!」と言われると、担当台に登って工場全体を見下ろして待ってて、怒られたりするトンチンカンな奴だけど、初犯だから仕方ない。

靴下を絞った件だって「報知器出して、職員に言ってからやれ」と言われても、刑務所の常識は一般常識からかけ離れた常識だから、いきなり頭を切り替えるのは難しいよ。

悪い事だと判ってやった確信犯じゃないんだから少し大目に見てくれてもいいのにねえ。

自分の靴下を絞っただけで怒られなくてもねえ。