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俺の、最後の獄中絵日記 第30回

前途不安、だけど

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、住み慣れた?小田原拘置所から、北海道は月形刑務所へ移送されてしまう。ここ月形では、どんな出来事が武二郎を待っているのか? 待望の刑務所編スタート!


前途不安、だけど


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2013年(平成25年)1月某日

新入訓練で作業していると時折、分類面接※1っていうのがあるんだけど、まあ色々聞かれる。

「やりたい作業は何かあるか?」って聞くからサ、彫刻がやってみたいって言ったんだ。

月形には鎌倉彫の家具作ってる工場があるって、部屋の親方が言ってたからサ。

興味が湧いて工作苦手だけどやってみたくなったんだよ。

すると面接官のオヤジが呆れた顔になって、
「何言ってんだ、お前。昔は確かにやってたけど、20年以上前の事だぞ。
お前、良く知ってるなァ」だって。

いつの時代の話してるんだよ親方!

とまあ、そこまではよかったんだけど、そのあとに今回の懲役で最大のピンチがやってきた。

外部交通※2が一切、不許可になったんだ。

それは俺だけじゃなくて、外部交通の申請を出した人のほとんどがダメだったらしい。

過去5年以内に受刑経験がある人ならまだしも、府中で許されていた人まで不許可だ※3

これで近況報告してくれる人間も、差し入れ頼める人間も、お袋の安否を知らせてくれる人間までもが居なくなった。

こりゃ今回、苦しい懲役が確定だな。

しかし、俺は今回こそ最後の懲役にするつもりだから、誰かに助けを求めるような事はやめておくよ。

ここはひとつストイックに行くよ、男としてネ。


※1 身元引受人の事や過去の職歴、ここではどんな作業をしたいかなどを聞く面接のこと。かれるもので、場合によってはそれらの経験が活かされる工場に配役になる
※2 面会や手紙の発信のこと
※3 府中刑務所のように、受刑者にとくに厳しい刑務所でも優良な受刑者だったのに、ということ