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俺の、最後の獄中絵日記 第29回

パチるな!

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、住み慣れた?小田原拘置所から、北海道は月形刑務所へ移送されてしまう。ここ月形では、どんな出来事が武二郎を待っているのか? 待望の刑務所編スタート!


パチるな!


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パチられた。

パチられた、っていうのは、見られた、とか、現認されたって意味の隠語だ。

その瞬間を、カメラでパチリとやられたところから来てるんじゃないか、と俺は思うんだよ。

げんにケンカとかでも必ずカメラ持ってオヤジはあらわれるし、ケガしたときも写真だしね。

そして今日、正月早々から俺がパチられたわけだ。

年明けに送られてくる奴らが居る※1のだけれど、彼らがどの舎房に入るか書かれた紙が正面の担当台に貼られている。

部屋が5人になっては狭くて参るぞと思い、作業中にちらりと見てみるが、字がヘタクソで何と書いてあるのかわからない。

仕方ないので目をこらしてガン見していたら、

「おい、ゴトー!」と来たわけだ。

「お前、さっきからずっと前見てるぞ! そりゃ脇見っていうんだ。何かあるのか!」

ここじゃうつむいて自分の手元を見ること以外、たとえ正面を向いたのでも"脇見"って言うんだネ。

まあ、何かあるのか!って言われても何もないけど、確かに少し気がゆるんでたのかもしれない。

そーゆー時は、抗弁せずにひたすら「すみません!」だ。

こんなところで連れていかれちゃ※2、俺の誓った"仮釈作戦"も台無しになっちまう。

本当、油断禁物だよ。正月早々からこんなザマじゃ、今年も思いやられるかもナ。


※1 月形刑務所で服役するために移送されてくる受刑者のこと
※2 懲罰房に連れていかれるなどの処分を受けること