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俺の、最後の獄中絵日記 第28回

泣きたいのはお前だけじゃない

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、住み慣れた?小田原拘置所から、北海道は月形刑務所へ移送されてしまう。ここ月形では、どんな出来事が武二郎を待っているのか? 待望の刑務所編スタート!


泣きたいのはお前だけじゃない

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2013年(平成25年)1月某日

一緒の部屋のヨッちゃん。
この男、現役ヤクザで、すげーでかい体してるわりに涙もろい。

正月に送られてきた女房と娘、そして生まれたばかりの息子の写真を見ながらメソメソ。
とくに、やっと覚えた娘のひらがな文に泣けたらしい。

オイオイ、そんな図体でメソメソすんなってんだよ。

泣きたいのは誰からも手紙の来ない俺の方なんだからサ。

俺の懲役生活の歴史の中には刑務所に来た事で家族を失った奴はごまんといる。

まあ、俺もそのうちのひとりなんだがね。

そんな奴らの涙に比べたら、お前のは嬉し涙じゃねェか。少しは耐えろ!!

......だけどさ、まだ手のかかる幼児を2人も抱えて、近くに頼れる実家があるわけでもなく、それでも頑張って刑務所に行った夫の帰りを待つ女房っていうのも、考えてみればすごいよナ。

こんなふうに愛されてる男たちと、逮捕された時点でみくだり半を叩きつけられた俺と、いったい何が違ったんだろうっていつも考える。

そして出る答えはいつも同じなんだナ。

たくさん話をして親しくなって、そいつらの事知るとサ、このヨッちゃん同様に女房に優しいんだよ。

思えば、俺だって良いパパをしていたはずだ。

人に負けたくなくて、仕事も頑張っていた。

でも、その反面、自分のことばかりで、一番近くに居る女房に優しくなかったんだ。

ああ、俺も女房子供の事でもっとメソメソしたかったなぁ!