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検察とは何か? ~捕まったらこうなった~【後編】

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無実の人間が「自供」してしまう心理

「そもそも検察担当の記者っていうのは、独自の取材ができない仕組みになっているんですよ。たとえば東京地検ならば特捜部長、副部長にしか記者は当たれない(=取材できない)。それ以外の検事に当たると、その社全体が検察記者クラブから閉めだされて一切の情報をもらえなくなっちゃう。それが嫌だからマスコミは、特捜部長が作った世論を誘導するためのストーリーだとわかっていても、それをそのまま書いちゃうの!」

 そう憤るのは現職国会議員のY氏だ。彼は、自らの逮捕を冤罪であるとして、最高裁まで闘った人物である。Y氏の場合、事件を否認したこともあってか1年以上拘置所に留め置かれ、その間は毎日のように激しい取り調べを受けていたのだという。

「密室で何時間も何時間も、何日間も誘導尋問されるでしょう。時間の感覚とかなくなって、正直な話、一時は精神のバランス感覚がおかしくなりましたよ。何度『やりました』って言いたくなったことか」

 やってないことでも、「やった」と言ってしまう心理。ドラマや映画などでは何度か観たことのある冤罪事件発生の瞬間だが、現実にそんなことがあり得るのだろうか。

「まあ確かに検察官は社会全体の向上よりも、目の前の容疑者を落とす(=自供させる)ほうに快感を覚える人種ではあるね。そのためには、まず『容疑者が口を割らない理由はなにか』という考え方をするんだよ。たとえば『友人に迷惑をかけたくない』という理由で黙っている容疑者だったら『他の人間の証言も取ったから、お前がしゃべらずにがんばる意味はないし、最後まで黙ってたやつがいちばん貧乏くじを引くことになるぞ』という攻め方をするだろうね。社会的地位が高い人間相手だったら『早く決着つけて社会に戻ったほうが目立たなくていいぞ。有罪になっても、どうせ執行猶予で、そんなの自分さえ黙ってたら誰にもバレないじゃないか。このままじゃ1年も2年も拘置所にいなきゃいけないんだぞ』とかね」(元検察官でヤメ検弁護士のX氏)

 つまり昔の『刑事コロンボ』みたいに、事実はどうで、アリバイはこうで、証拠はどうこうだから、と容疑者の目の前に事実を積み上げ逃げ道をなくし「私がやりました!」と自白させるのではなく、容疑者の精神的な弱点をチクチクチクチク突き続けて「じゃあ、これにサインな」と自分たちの作ったストーリーの書かれた調書にサインさせる、というのがどうやら日本の検察のやり方のひとつらしいのだ。

「それもね、百歩譲って、私のような被疑者をそうやって取調べするのはいいですよ。そうじゃなくて、たとえば私と関係があったとされる業者を呼び出して、『お前の会社は叩けばホコリが出そうだな。我々がそれを調べれば、お前の会社は潰れるぞ』『我々の狙いはYだ。裁判のときに、こういう証言をしてくれ。そうすれば、お前の会社の件はこれ以上突っつかないから』と言われ、そのあと何度も呼び出して証人尋問のリハーサルをやったそうですよ。その業者は、裁判が終わって何年かしてから私の事務所にやってきて、『あのときはすみませんでした』と泣きながら土下座してきましたよ。その男には『あんたもつらかったんだから、気にすることないよ。逆にすまなかったね』と言いましたけどね」(前出・現職国会議員のY氏)

求められる取調べの全面可視化

 では免罪事件をなくすためには、どのようにすればいいのだろうか。

「これはもう結論は出てます。可視化しかないです。取調べの全面可視化。被疑者はもちろん、参考人、証人、いわゆる検察官から調書を取られる人は全員、取調べの様子を録画、録音しないことには、今後も冤罪は作られますね。日本の場合、起訴された人間は99.9%有罪なんです。欧米では40%くらいかな。要するに日本の裁判所は、検察の調書を全面的に採用する、という傾向があるんです。つまり日本では、起訴されたら全部有罪ってことですよ。裁判所まで含めた司法改革をしない限りはね。でも、それを待っていたら何年先になるかわからない。だからその第一歩として、無実の人間が起訴されることのないような仕組み作りが必要なんです」(前出・ヤメ検弁護士のX氏)


(取材/文=R-ZONE編集部)

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これが検事のバッジ「秋霜烈日」だ