>  > 「なぜ危険ドラッグが流行ったのか」現役ドラッグディーラーが語る真相
密売人リューの告白 第2回

「なぜ危険ドラッグが流行ったのか」現役ドラッグディーラーが語る真相

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「悪貨は良貨を駆逐する。まさにそれがドラッグ業界で起こった」

 現役ドラッグディーラーのリューは言った。現在危険ドラッグと一括りにされている合法(脱法)ドラッグ、合法(脱法)ハーブの類をリューは早くから批判していた。

 前回の記事では、昔から「合法ドラッグ」の類はあったが、その品質や思想は現在の危険ドラッグとまったく異なるのだというリューの言葉を紹介した。

「そもそも合法のドラッグという発想からして頭がおかしい。いま合法、脱法と言われているドラッグやハーブは全部まとめて違法にすべき」

 2011年辺りからリューは会うたびにそう言っていたが、ご存知の通りいまもドラッグの密売人を続けるリューの言う通りに法制化されたのだから皮肉というしかない。リューは昔から非合法の商品以外扱っていないのである。

 しかし、だからこそ言えることもあるのかもしれない。

脱法ドラッグ≠危険ドラッグ

「よくマニアックな人が合法ドラッグを第何世代とか時期によってわけたりしているけど、その区分け自体がもはや意味をなしていない。まずそれを理解する必要がある」

 なにが意味をなしていないのか。

 リューが言うには、世代で区分けされていた「脱法ハーブ」と、ここ数年巷で多くの事件を引き起こした「脱法ハーブ」は根本的にモノが違うのだという。

「いわゆる〝スパイス〟が最初に出たのは2004年頃だった。この時期に、脱法ハーブが事故を引き起こした云々という報道が世間を騒がした記憶ありますか? もちろん実はスパイスを楽しんでぶっ飛んだ挙げ句、カマ掘ったの云々くらいはあるのかもしれない。でも、全国的な大問題にはなっていないでしょう?」

 例えば、この〝スパイス〟がスパイスゴールド、スパイスダイアモンドと改良されていく。このときにはまだ世代の区分けに意味があった。このスパイスブランドは、ヨーロッパの企業が作っているものだ。

「ヨーロッパで作っているハーブだから身体にいいということではない。ただし、そもそも彼らが合法ハーブに求めるものは、違法化されたり、質のいいものの値段が高騰する大麻に対し、安全かつ経済的に楽しめる疑似大麻を作ってしまおうという前提があった。だから育て方も大麻に似て、ハーブを育てる過程でトリップする成分を根っこから養分として吸い上げさせる。もちろんこのとき、企業はトリップできる成分がなんであるか、当然具体的に把握しています」

 言わば、リューが言う「良貨」とはこのヨーロッパ産の脱法ドラッグ/ハーブ。では、「悪貨」の脱法ドラッグ/ハーブとはどんなものか?

「スパイスとかその流れはさっきも言いましたけど疑似大麻、ダウナー系です。これは大麻愛好者が求めたものなわけですけど、日本のアウトローが疑似シャブ、アッパー系の脱法ハーブ、ドラッグを作ろうという発想を持ち込んだ。そしてヨーロッパでブランド買い付けるのではなく、中国で安くトベるものを大量生産しようという流れを作りました」

 中国人が発明し日本に持ち込んだのではない。日本の業者が工場を中国に作ったのである。

 イタリアで服を作るより、中国で作るほうが安いから中国に工場を作る。一般企業とまったく同じ発想だ。

 そして、ハーブの根っこから養分としてトリップできる成分を加えるヨーロッパの製法に対し、中国では適当なハーブ(乾燥させた雑草)に、外からよくわからない化学物質を吹き付け、外から混ぜる。

 「中国産のものは化学物質が凝固してハーブに付着しているんですけど、この化学物質を直接燃やして吸引するということの意味を何も考えずに『合法』だからとこぞって吸い始めた。このハーブはあれこれ名前をつけられたりしていますけど、もう世代なんて関係ない、ただのまがい物です」

 もちろん正規の(というのも語弊があるが)ヨーロッパルートのハーブに較べ、手間も材料費も、成分分析もよくされていない中国産のものは価格が安い。これがリューの言う、日本のドラッグ市場で「悪貨が良貨を駆逐した」瞬間であり、リューは語気強く「そもそも合法のドラッグという発想からして頭がおかしい」という由縁でもある。

 多くの人間が、ただ「合法/脱法」の名の下に、なんだかよくわからない化学物質を吸引するのが流行ったと考えれば、そのブームの狂気の一端を垣間見れるというものだろう。

 次回は日本の危険ドラッグ事情のさらに裏側に横たわる闇に迫りたい。


(取材/文=李白虎)

ガンジャ.jpg

リューの扱う"ブツ"は、裏の人間からも人気が高いというが......