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2014年夏に起こった、ある殺人事件のその後【前編】

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 2014年8月、日本のある地方都市で無職の17才の少年が、当時付き合っていた20代女性を刃物で切りつけ殺害し、山中に死体を遺棄した。このキーワードだけで少し調べれば概要は出てくるのを、筆者は確認しているのであえて場所などの詳細は明かさない。それらをすべてを書いてしまうと、その町の無関係な住民の名誉を傷つけることにもなりかねないという判断からのことなので、了承されたい。

山間の狭い町で事件は起こった

 痛ましい舞台となったこの町は、村といったほうがふさわしい山間の地であり、住民の大部分が知り合いとでもいったような濃密な人間関係が形成されている。

 現地取材で決して報道されなかったいくつかの事実、真実を掴むことができたのは、この濃密な人間関係故に、様々な住民から話を聞くことができたからといって過言ではない。

 だが、もちろん事件自体は土地柄とはなんの関係もないし、結びつけて考えるべきではない。痴情のもつれが、悲惨な結果を生むのは世界のどこでも起こり得る話だ。ただ、事件の本質について警鐘を鳴らさなければ、また日本のどこでも同じような事件が起きかねないので、その生々しい実態をできる範囲で順に解説していきたいと思う。

 最初に、少年は事件後保護者を伴って自首したと報じられているが、具体的にはこれは父親と一緒にということである。そして、少年は「別れ話が原因ではない」といった供述を警察にしているという。

情緒不安定に見えた当事者二人

「この2人は日頃からよく口論をしていたのは知られたことなので、別れ話が原因ではないと言われても、にわかには信じられない。ただし、別れ話だけが原因ではないと言えるかもしれない」

 そう話すのは、少年の家族と交流があったというある住民の話。ここでは、仮に山岡さん(仮名)としておこう。

 では、なにが原因だと、山岡さんは考えているのか? 

「そもそも、この2人はめちゃくちゃに情緒不安定だった。特に少年のほうは、この前に付き合っていた彼女ともモメて、切腹の経験があるのはこの辺りでは知られた話だった」

 これ以前の彼女というから、当然17歳、 もしくはそれより以前のことであり、なかなか穏やかでない話だ(年老いれば、切腹をしても穏やかというわけではもちろんないが、それはともかく)。

 彼が激情傾向の性質を持っていたとは言えるようだ。しかし、この事件が悲惨なのは激情傾向にあったのは、この少年だけではないということだ。

 今度は、被害者女性の知人に話を聞こう。こちらは国仲さん(仮名)としておく。彼女が言う。

「刃物で切りつけて殺害したと報じられていますが、実際は切りつけたというより滅多刺しで、見るも無惨だったようです。ただ、この刃物は、元々彼が持っていたのではなく、最初に出したのは彼女ということでした。私のイメージでは、彼女も相当、情緒不安定だったと思う」

 この話を聞くと、10代の男子との喧嘩に刃物を持ち出す20代女性というのも、また随分穏やかではないのがわかってくる。

 では、なぜこの2人は、このような泥沼にまで漬かっていったのか。

 次の原稿では、町内で語られている噂と、事件後に起こった、さらに悲惨な一面について書くことにする。

「2014年夏に起こった、ある殺人事件のその後 後編」に続く


(取材/文=李白虎)

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その町は自然に囲まれているが、長閑というよりもどこか陰鬱な空気が漂っていた